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ここは王都より離れた町、オークショット。
この町では、あまり公にされていないが、今年に入ってから子供の行方不明が多発している。
「結構大きな町なんだけどなぁ。」
商店を歩きながら、ハルは町の様子を観察していた。
大きな町というのは、それに応じて防衛機能がしっかりしている。人が多ければその分、犯罪が多発するからだ。
そして今回の依頼は行方不明の子供の捜索。だがその数も、既に20名を越えているらしい。
現状を見る限り、町の中でおかしなところはなかった。大きな町という事もあり、商売人には活気がある。
「とりあえず、情報収集だな。」
ハルは手近な飲食店に入った。
ちょうどお昼時という事もあり、中々の繁盛ぶりである。
店内をこまねずみのように動き回っている女性は、見たところ店のおかみさんなのだろうと思われた。
「あの~、こっちも注文良いですかね?」
ハルはそんな目星をつけつつ、広くない店内を行き来するふくよかな女性に声を掛ける。
「はい、はい。おや、また随分と若いハンターさんだね?何にします?」
にっこりと笑顔を向けてくる女性は、その目尻のシワからとても穏やかな印象を受けた。
ちなみにハンターの装いは見て分かる。明らかに町で生活をしている人達と違い、防具や武器を身に纏っているからだ。
「えっと、ここのお薦め手羽元のスッパ煮と、堅焼きパンをお願いします。」
「はいよ。…と言うか、アンタさんは鳥を飼っていながら、その目の前で鳥を食べるのかい?立派な性格してるねぇ。」
アハハッと豪快に笑いながら、奥へと注文を叫ぶ。
この女性とは別に、店の奥では調理専属スタッフが次から次へと料理をカウンターに出していた。
「まぁ、ジェフは食材じゃないんで。それに肉食なんで、コイツも鳥肉を食べますからね。それより、何か興味を引きそうな話はないですか?」
ハルは笑顔を向けながら、肘をテーブルについて女性を見上げる。
「あらぁ、アンタさんもかい?」
「俺以外にもハンターが来てるんですか?見たところ、それほどでもないような…。」
その探るような問い掛けに、ハルは店内を見回した。
「夜だよ。昼間は皆、寝てんじゃないかい?何でも夜になると、子供を狙った誘拐犯が出るらしいよ。嫌だよねぇ、本当に。」
手に持っていたお盆を抱き締めるように、店員は大きく身震いをしてみせる。
「夜…ですか。と言うか、拐われた子供は戻って来ていないんですか?」
「ここだけの話、一人だけ遺体が発見されたって聞いたよ。詳しくは自警団の管轄だから知らないんだけどね、首から肩にかけて大きく歯形がついていたって話さ。」
心配を乗せたハルの表情に、店員の女性は内緒話をするかのように、口元へ手を当てて小声で告げた。
詳しくは知らないとか言いながら、さすが食事処の店員である。恐らくは自警団の人間もここに食事をしに来るのだろうと予想が出来た。




