81
■□■
ハルは、ギルド街区のハンターギルドに到着する。
「な、何だよ、それ!?」
入ろうとしたらギルドの誰かにぶつかりそうになった。
「あ…、ごめん…なさい。」
だがハルはそれを誰とも確認する事なく、軽く頭を下げて謝罪する。
ぶつかりそうになった事を謝罪したつもりだが、違う感情が不意に沸き上がった。
誰に…謝りたかった?
その自分の中の疑問に答える事が出来ず、そのまま入口に立ち止まるハルである。
「邪魔なんだけど、バカハル。…何さ、おかしな顔して。」
その後、ハルの背を押すようにギルドに入って来たのはジミー。
だがその顔を見て、様子のおかしいハルに首を傾げる。
「…何でも、ありません。」
何とかそれだけ答えると、ハルは左肩にジェフを乗せたまま依頼ボードに歩み寄った。
そして徐に一枚の依頼用紙を取ると、記録媒体と共に受付のエリン・ハートリーに差し出す。
「これを。」
「は~い、少しお待ちくださ~い。ん?あの、これをお一人…ですよね。」
内容を確認したエリンが一瞬迷うも、相手がハルだという事で承認印を捺して返した。
通常、依頼の受諾方法として、受付の承認印が必要なのである。
「どうぞ。お気を付けて。」
「ありがとう、ハートリーさん。」
ハルはいつもの笑顔を見せ、そのまますぐギルドを後にした。
「何だか…、いつもと違います…よね?」
首を傾げるエリン。
「そうだねぇ。いつも変だけど、今日は一段とおかしいね。…いつもより、もっと作り物臭い。」
同じくハルの背を見送ったジミーは、エリンの独り言に返答じみた言葉を返す。
「まぁ、だからといって私には関係ないんだけど。エリンちゃん、私はこの依頼を受けるから宜しくね。」
「あ、はいっ。」
ハルの事を気にしつつも、ジミーは自分用の依頼用紙と記録媒体をエリンに手渡した。
誰であっても、どのランクにいようとも、ギルド内で依頼の受け方は平等なのである。例外があるとすれば、直接ギルドマスターから依頼を受ける場合だけだ。
「私も早くランクを上げなきゃね。いつまでもバカハルの下になんかいられないっての。」
ジミーはそう言いつつ、拳を握る。
基本的に単独行動のハルは別として、通常は依頼によってギルド内で簡易的にパーティーを組む事が多いのだ。その場合、必然的にランクが上の者がリーダーになる。
「そうですね。そうやってギルド内の皆さんが切磋琢磨していかれるのは、マスターもとても喜ばれます。」
エリンがにこやかに応じた。
実際の能力の差は分からないが、個人個人で得手不得手があるのは当たり前である。各人の能力向上は、ギルド全体のパワーバランスを取る為に必要な事でもあった。




