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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
吸血鬼
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■□■


 ハルがクロフォード邸に到着したのは、まだ太陽が真上に登る前である。


「ダン~?…いないのか~?」


 屋敷中を探し回り、首を(ひね)るハル。


 自室にも、いつもいる筈のリビングにもいないのだ。


「…っかしいなぁ。いつもならここで、マッタリと昼寝をしてるのに。」


 頭を()きながら外に出る。


 普段こんな時間に帰れば、何を置いても飛び付いて来るダンがいる筈だった。


「そんなに怒ってるのかなぁ。…家出?」


 腕を組んで考えるハル。


 ハルにとっては弟のような存在のダンだが、自主性を尊重したい。四六時中束縛したくはないし、何よりももう子供…幼獣ではないのだ。


「はぁ…、俺が構いすぎなのかな。確かに、もう成獣だからなぁ。…あ~、ダメだ。変に考え込んじまう。依頼(クエスト)受けに行こうっ。」


 手荒く髪を()(むし)ると、ハルは再度ギルドに足を向ける。


 ジェフはハルの左肩から彼の髪を軽く引きながら、屋敷の後ろを気にしていた。


「何だよ、ジェフ。俺の髪は食い物じゃねぇからな?」


 それでもハルはそれに気付く事なく、屋敷を後にしたのである。


 屋敷の(あるじ)が出掛けた後、屋敷裏に隠れるようにしていた黒豹のダンが姿を表した。


(…ハル…、俺…()らない?)


 金色の瞳を揺らしながら、既にいない彼を思う。


 突然ハルと一緒にやって来た大きな鳥。今も彼の肩の上にいるだろう姿を思い浮かべ、自分は頻繁に外へ連れて行ってもらえない事に気付いた。


(俺…より、鳥…が良い…かな)


 幼い頃は常に一緒にいたのだが、今のダンはハルよりも大きい。さすがに町中(まちなか)に出るのに、黒豹と一緒という訳にもいかないのだ。


 ハルがダンと町を歩くのは早朝、人があまり起きていないような時間帯のみ。もしくは人通りの少ない道を通ってギルドに行くくらいだった。


(俺…、邪魔…かな。…黒豹、だから…かな)


 初めて考える。


 今までは当たり前にハルと一緒だった。拾われて…助け出されてからずっと、ダンにはハルしかいなかったのである。


 父親(ジェイラス)もアンディも、ダンとは距離があった。当たり前に、人と黒豹なのだから。


 ハルのように接してくれる存在は他になく、自分の親も記憶にない。鎖に繋がれて狭い小屋にいた事しか覚えていなかった。


 だからこそ、ハルが全てだった。抱き締めてくれる温かさも、時に(しか)る厳しさも。


 ダンは、自分が幼獣でなくなったのは分かっていた。それでもハルと一緒にいたかった。甘えたかった。


 空を見上げる。


 太陽が真上に来ていた。


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