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「要らなくなった武器の買い取りもするぞ?」
「あ…じゃあ、お願いします。ってか、そんなサービス、前からやってましたっけ?」
ロブのありがたい提案に、ハルは迷いもせず応じる。
実際、素材を提供するからといって、製作依頼には料金も発生するし、武器や防具は決して安いものではないのだ。
「いや、今回からだ。鍛冶屋もリサイクル活動だな。買い取ったものはそのまま別の貰い手に転売したり、バラして素材にするんだ。鍛冶屋ギルドで決まったから、恐らく何処の店でも始めているだろう。」
ハルの差し出す、不要となったレイピアを受け取るロブ。
ハンターギルドとは違い、鍛冶屋は全部がより集まって、一つのギルドを形成している。
「鍛冶屋って、素材に戻す事も出来るんですか。すげぇ。」
「何を言ってるんだ。ハンターの方がよっぽどだろ。魔物と戦うなんて、俺はとてもじゃないが出来んぞ。頼まれたら即行で断る。」
そう言いながら、ハッハッハと大声でロブが笑う。
「ん~、どうっすかね?俺は物心ついた頃から、父さんとハンター業に携わってましたから…。他のギルドがあるなんていう選択肢は、初めから考えてもなかったですね。」
事もなげに答えるハルは、ハンター以外に自分の在り方を見出だす事すらなかった。
目的とする物があるからである。
「そうだな。俺の鍛冶屋業も、親父の店の手伝いから始まったもんだから、ハルと大して変わらないか。」
微妙な空気を大声で笑って払うロブ。
彼はハルの生い立ちを知っているからこそ、それを抉り出すような真似はしなかった。
「ですね。…ではこれ、早速使ってみます。ありがとうございました。」
ハルは笑顔を向け、頭を軽く下げる。
「おぅ。また何かあったら来てくれよな。」
ロブの言葉に片手を上げながら、ハルは鍛冶屋を出た。
だが、人との距離感は難しい、と内心溜め息をつく。
「さてと。昨夜から拗ねているダンのご機嫌とりに行くか。」
再び溜め息と共に呟き、ハルは左肩のジェフを撫でた。
目を閉じ、触れられる喉元を伸ばすジェフ。
「しっかし、昨日のダンは凄かったなぁ。」
昨日屋敷に帰った時、笑顔で出迎えてくれた同居人を思い出す。
ダンは跳ねながら外まで迎えに出たのだが、ハルの肩に乗ったジェフに青くなり、赤くなったのだ。
いや、黒豹だけに顔色が分かる訳ではない。しかしながら、感情ただ漏れなダンを良く知るハルにとってはそう見えた。
初めは見慣れぬ鷲に対する恐怖かと思ったが、どうやら怒っていたようである。何をするかと思い見ていたが、そのまま屋敷内へ静かに帰って行ったのだ。
それからはダンの姿を見ていない。夕食も共に食べるのを拒否し、朝食も声を掛けたが出てこなかった。
「ったく…、面倒臭いな。」
大きく溜め息をつくハルだったが、それでもギルド上位者街区のクロフォード邸へと足を向ける。
ジェフの様子は変わらず、ハルの左肩の上で軽く首を傾げるくらいだった。




