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「あの…ね?…まさか、その鳥と…会話をしている訳じゃ、ないわよね?」
真面目に問い掛けるクラウディア。
それを受けて一瞬呆けたハルだったが、すぐに大きな声で笑いだす。
「アハハハハ…何、それ…っ!」
お腹を押さえ、さも面白いとばかりに大笑いだ。
鷲はハルの左肩の上に器用に乗ったままで、そこを定位置に決めたようである。
「だ、だって…。」
「ククク…、面白い事を言うね。…単に、俺が強いから従うと決めただけみたいだよ。まだ若い鷲だしね。余程、アイテムボックスの中が嫌だったとみえるね。」
未だ笑いながらも、ハルはクラウディアにそう説明した。
「な、なぁんだ。そうだったの…私、てっきりハルが動物と話せるのかと思っちゃったわよ。」
ホッとした様子のクラウディア。その近くでは、同じ様にジミーが頷きながら納得している。
ジャスティンの方はそうでもなさそうだが。
「ん、名前決めた。ジェフ・オーツだ。良いか、ジェフ。」
肩に向かって話し掛け、鷲は理解したのか一声鳴いた。
「ハル、アンタさぁ。何でペットにフルネームつけるの?黒猫もでしょ。」
呆れた様にジミーが告げる。
「猫じゃないですよ、ダンは。それに、ペットというカテゴリーでもないです。ファミリーネームが違う名前は、血の繋がりのない事と第三者の意味を持っているので、俺で言うと気を許す仲間ですかね。それで、俺とは違う名前をもたせてます。…と話は戻りますが、とりあえずジェフでアイテムボックス内の生体格納の安全は確認されましたよね?」
笑顔でジミーの問いを流しつつ、救出した女性達の扱いを決定しようとハルが問い掛けた。
それを受け、他の三人が顔を見合わす。
「まぁ…、ねぇ。」
「仕方がない。アイテムボックスへの格納に賛同する。」
クラウディアは戸惑いながらの返答だったが、ジャスティンは視界に入れる事すら出来ないので大賛成である。
「私もそれに関しては賛成しておく事にするよ。」
最後にジミーが賛同した事により、全会一致で議決となった。
「良かったです。では、これで心置きなく王都に帰れますね。」
手早くアイテムボックス内に女性3名を格納したのち、ハルはニッコリとパーティーメンバーに向き直ったのである。
「あ、歩いて帰るのよね?」
再三のクラウディアからの確認に、ハルは思わず笑いが溢れた。
「だからさ、クラウディア。そんなに言うと逆に、飛びたいのかって思っちゃうよ?」
「い、いらないわよっ。私は歩いて行くわっ!」
焦りながら拒否の言葉を告げ、さっさと一人で歩き始めるクラウディア。
「本当に…可愛いんだから。」
ハルは小さく呟きながら頬を掻き、その背を追い掛ける。
その二人の様子を見ていたジミーとジャスティンは互いに顔を見合わせ、一方は肩を竦めて一方は眉間にシワを寄せ、それぞれがそれぞれの思いを胸に秘めて歩き出したのだった。




