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「大丈夫なんじゃない?彼女達、貴族の間で流行っている香水をつけているもの。私も何度か、プレゼントにってお願いされた物だから覚えてるの。」
何故かジミーが自信ありげに答える。
貴族の間で流行っている香水を彼が詳しいのは、彼いわく女性達からせがまれるからのようだ。
「良く分かるわね、ジミー。って言うか、あなたがねだるんじゃなくて?」
「ちょっと、どういう意味?私は男なの。何で私が香水を欲しがらなきゃならないの。」
素直に思った事を口に出すクラウディアは、ジミーを男性と分かってはいる筈なのだが。
それに対し、すぐに目くじらを立てるジミー。
「からかわれているって分かっていても、ヘイリー姉さんは噛み付かずにはいられないんですよねぇ?」
ハルはクスクスと、楽しそうに笑うだけだった。
「何故、皆はヘイリー殿にそのような言い方をするんだ。」
「あ~…、フラトンさんには分からない世界もあるんですよ。っと、それより俺はこれから女王を討伐してきます。フラトンさんはクラウディアとここに残って、彼女達の護衛をお願いしますね。」
怪訝な表情を見せるジャスティンを軽く躱し、ハルはにっこりと最終討伐を告げる。
「その言い方なら、私と行く事になるのね。」
「そうです。パーティーは解散しないですから、フラトンさんにもクラウディアにも経験が付与されます。問題ないですよね?」
ジミーの問いに答えつつも、ハルはパーティーメンバーを見回した。
不満そうなのはクラウディアくらいだが、拐われていた女性が三名戻ってきている。意識のない女性をこのまま…何もしないだろうが、男性だけの前に放置は出来ない。況してや、衣類を身に纏っていないのなら尚更。
そこまで考えた上、クラウディアは文句を呑み込んだのだろう。
「んじゃ、ヘイリー姉さん。行きましょうか。あ、念の為に…風壁。ここに防御魔法をかけておきます。」
背を向けようとして、思い出したように防御魔法を唱えた。
恐らくジミーの出した物だろう。いつの間にか簡素な敷物が敷いてあるので、その上に三人の女性を横たわらせた。
「私は仕方なく行ってあげるだけだからね。」
「それで良いですよ。このまま女王を単体で残しておく訳にもいきませんし、奥までまだ確認していませんから戦闘員が残っているかもしれませんからね。」
ジミーは顔を背けるが、それを見てでも楽しそうな笑みを見せたハル。
討伐が楽しくて仕方がないといった、いつものハルの表情だった。
ここでクラウディア、ジャスティンとは別行動となる。
恨めしそうなクラウディアの視線を感じながらも、ハルとジミーの二人はインセクトレイドの巣穴に再び向かっていった。




