65
■□■
「な、何よ…それ。」
外に出たハル達を見て、クラウディアが訝しそうな視線を向けてくる。
「いやいや、俺達は命の恩人な訳で。」
「その…ジャスティンの鼻血は、何。」
三人の女性を飛行魔法で浮かばせて運んできたハルは、両手を軽く胸の前で振ってみた。
それでもクラウディアの細めた視線は変わらずで、どうやらジャスティンの顔の下を覆う布が赤い事が問題のようである。
「何かしたの、ハル。」
ジミーまでもが視線を鋭くする始末。
「え~…、俺って可愛そうじゃない?何で悪役決定な訳なんです?」
前半はクラウディアに、後半はジミーに問い掛けるハルだ。
確かに全く汚れても疲れてもいないハルの様子から、くたびれているジャスティンをどうこうしたかと思われて仕方がない。
「いえ、ディア。心配には及びません。私は魔術師に何かされた訳ではないのですから。」
「そうよね。当たり前じゃない。」
見かねたジャスティンが助け船を出し、クラウディアがすぐにそれを肯定する。
「私が聞きたかったのは、布巻きにされてる女性の事よ。…裸なの?見たの?」
状況的に察したのか、クラウディアは二人の男の瞳を覗き込むようにして問い掛けた。
「え?どういうことなのさ。」
ジミーだけはその真意が分からず、一人で混乱している。
「アハハ…、餌扱いだったからね。人間の装備品は不要だったみたい。」
「…見たのね?」
苦笑を浮かべるハルだが、クラウディアはハッキリとした問いの答えがほしいようだ。
ジミーの方はハルの言葉で漸く察したようで、逆にジャスティンの状況を不思議に思っている様子。
「そりゃ、見えちゃったけど。でも俺より、フラトンさんは凄いね。もう、出欠多量になりそうだった。」
「…昔からよ。って言っても、私が知っているのはここ5年程だけど。あ、でも内緒ね。侍女達も知らないから。ジャスティンは鼻の血管が弱いの。私の生足でもダメなのよ?」
「ぅあ~、凄いね。」
情けない話をクラウディアから公表され、ジャスティンは肩身が狭そうに身体を小さくしている。
それに同情的な視線を向けるのはジミーだった。
「それで、そちらはソーントン男爵家のご令嬢達なのかしら?」
「多分。さすがにジョアンナ・ソーントン嬢は分かるけど、キャロル・グウィルト嬢とエリカ・マクスウィーニー嬢は分からないね。肖像画をもらったの、男爵令嬢だけだからさ。」
クラウディアは三人の人相を知らない為、正しい判断がつかない。
一方、ハルも男爵家の令嬢を含めた三人の女性が纏めて監禁されていたから連れ出しただけだった。




