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「ったく…いい加減、嫌になってきた。…風爆。」
ハルは前方に山積みになってきたインセクトレイドの残骸ごと、圧力を高めた風で爆風を起こして奥に追いやる。
あまりの量に、解体する事すら嫌になったようだ。
「アイテム狙いじゃないし、ワサワサ出てきすぎだっての。」
目の前がスッキリした開放感に、ハルは大きく肩と首を回して溜め息をつく。
通路の奥に押し込むように爆風を放った為、少しだけ静かになったのだ。
「おい、魔術師。終わったならこっちを手伝え。」
それを見計らっていたのか、ジャスティンの声が聞こえる。
「あ~…俺、見張りに立ってた方が良いんじゃないです?」
「そんなもの、出てきた時にまた魔術師が処理すれば良い。早く手伝え。」
出来るだけ穏便に済まそうとするハルなのだが、ジャスティンはそれを認めないようだ。
相変わらずトゲのある上からの物言いで、ハルに応援を求める。
「そう来ますか…、結局俺が処理班って…。はいはい。」
仕方なしに、ハルは溜め息をつきつつもジャスティンのいる部屋の方へ足を向けた。
「…早くしろ。三名を背負っていては戦えない。」
ジャスティンはハルに視線を向ける事なく、ソーントン男爵家の令嬢を横たわらせている。
そして彼女には自身の上着を一枚脱ぎ、その力ない身体を覆うようにしていた。だが彼女は意識がなく、血が通っているとは思えない程に青白い顔をしているのだ。
「生きて…ます?」
「当たり前だ。」
言葉と同時に、ジャスティンはハルに鋭い視線を向ける。
生きていないと困るといった、内心の不安の現れのようでもあった。
ハルは溜め息をつきそうになるのを堪えつつ、残る二人に視線を移す。
実際、その空間は食糧庫のようだった。そこかしこに肉片が転がっており血臭と腐臭が鼻をつく中、この三名の女性は生きているからこその捕縛なのだろう。
「俺、細かい作業は好みじゃないんですよね。」
「煩い。魔術師の感情はここには関係無い。早くしろ。」
頭を掻きながらぼやくハルに、ジャスティンは道具とばかりに金属質の大きな杭のような物を投げて寄越した。
「何ですか、これ。」
「発掘道具だ。見て分からんのか。」
バカにするかのような視線をやるジャスティン。
ハルは手元のそれと壁に視線を向ける。
「…もしかしてフラトンさん、これでその令嬢を掘り出したんです?」
だが、それを呆れたような言葉で返すハルだ。
「化石じゃないんですから、もっと手っ取り早くやりましょうよ。…雷電。」
瞳に怒りを見せたジャスティンをよそに、ハルは白色がかった魔力で、捕らわれた二人の女性を攻撃する。
というよりも正確には、石化と思えるようなインセクトレイドの拘束を打ち砕いたのだ。
インセクトレイドは食糧とする生体を、自らの粘液を使って張り付けにしておく習性を持っている。勿論、生体の頭部以外は全く身動き出来ない状態にする為だ。




