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再度ジャスティンがクレイモアに四元素の一つ、水の魔力を込める。
「へぇ~…。さっきよりマシになってるじゃん。けど、少し集中が足りないな。」
ハルは冷静にその攻撃を観察していた。
案の定、壁に攻撃が弾かれる。
「くそっ!」
「あ~、フラトンさん。魔法剣なんですけど、もう少し安定するまで魔力を込められますか?」
ついついハルは口を出してしまい、思い切りジャスティンに睨まれた。
それでもジャスティンは、再び魔法剣を発動する。しかも今度は、クレイモアの刀身が青白く輝くまで力を込める事に成功した。
降り下ろされるクレイモア。打ち砕かれるインセクトレイドの壁。
「ひゅ~、さすがですね。」
わざとらしく誉めれば、ジャスティンから再び鋭い視線が飛んでくる。
「あ、別に茶化している訳ではありませんよ?」
ニコッと笑みを返すハルは、両手を軽くあげてみせた。
「魔術師。…敵だ。」
ジッとこちらを見ていたジャスティンだったが、紡がれた言葉はハルが思っていたものとは異なる。
後ろを振り返ると、再びインセクトレイドが抵抗をしに来ていたのだ。
「了解…。んじゃ、あっちは俺が相手しておきますんで。フラトンさんはそちらをお願いします。」
ハルはそれだけ言うと、ジャスティンの返答を待たずに踵を反す。
「それにしても、ごちゃごちゃ出てきたなぁ。」
第一印象はそんなものだった。
大きさや種類の違うインセクトレイドが、揃いも揃って武器を手に現れたのである。
大きさが違うのは育ちなのか、役割なのかは分からない。だが、昆虫の顔等に個人差を見分けられる筈もなく。
「残り全部、だったりして?」
ハルは軽く頭を掻いた。
巣別れしたのであれば尚更、総数が少ない筈である。
「けどまぁ…、俺としては敵だと認識したからね。今更容赦なんてしてやんない。…風刃。」
そしてハルは、インセクトレイド達に向けて風の刃を放った。
前衛に出ていたインセクトレイドが何体か、その魔法の刃によって身体を分断され、地面に崩れ落ちる。
余程の装備をしていない限り、ハルの本気の魔法を防げる筈もないのだが。
「年齢差も雌雄の区別も出来ないけど、向かってくるなら全部敵だから。…風刃。」
ハルの警告も、インセクトレイドには伝わっていなかった。各々が武器を手にこちらへ攻撃をしてくる。
勿論、広くはない通路での戦闘だ。
ハルの目の前に立ち塞がるインセクトレイドは、横並びでも5体といったところか。
それらの武器の間合いに入る前に、ハルは淡々と風の刃で一掃していった。




