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「結局、俺じゃないですか。」
「仕方無い。私より魔術師の方が、複数殲滅に向いているだけだ。」
結果的に、ハルがインセクトレイド達を殲滅してしまったのである。
「分かってますけど…。それでも俺だけに働かせるの、パーティーとして減点ですからね。」
「私は剣士だからな。剣士としての働きはしている。」
ジトッと目を細めて見てくるハルにもめげず、ジャスティンは胸を張って宣言した。
「ったく…クラウディアの王女気質、これが移ったんじゃね?いやいや、実際に王女だけどさぁ。」
顎に手を当て、ボソボソと独り言を呟くハルである。
「何をブツブツ言っている。ソーントン男爵令嬢様は何処だ。見つかったのだろう?」
一応周囲を警戒した後、ジャスティンはハルに向き直った。
「あ…、見つかりはしました。」
歩み寄ってくるジャスティンに、ハルは身体をずらす事で道を譲る。
それでも、ハルの表情は硬かった。
「どうしたと言うのだ…っ?!」
ジャスティンは隙間を覗き込んだ途端、息を呑む。
指一本程の隙間しかないが、中の様子はしっかりと確認出来た。勿論、三名の連れ去られた女性がいる。
ただし、とても元気でいるとは言い難い状態だ。
「…とりあえず、ここをもう少し広げます。」
「私がやろう。クレイモアを振るえば何とかなるやもしれん。それに魔術師の魔法では、中にいる彼女達も危ないかもしれないからな。」
そう言ってジャスティンが構えたのは、背負っていた1メートル程の刀身を持つ大剣。
彼の意気込みを感じ、ハルは邪魔にならないように十分な間合いをとる。視線だけでそれを確認したジャスティンは、クレイモアを肩に担ぐように構えたまま動作を停止した。
そのまま暫く見ていると、クレイモアの刀身が青く輝きを放ち始める。
「へぇ…、水の魔法剣として使えるんだ。」
感心するハルだった。
魔力を全く使えない訳ではなく、あくまでも補佐的な能力として使用するのがジャスティンの戦い方のようである。
そしてジャスティンは、魔法剣となったクレイモアを壁に向けて振り回した。
「くっ!」
ガキンッという硬質な音と共に、ジャスティンが息を呑む。
どうやら弾かれた反動が、予想していたよりも強かったようだ。
その証拠に、壁は僅かばかり欠けて下に落ちただけである。
「ね?言ったじゃないですか、固いですって。」
ハルは口元に浮かぶ笑みを必死に押し込めつつ、ジャスティンに同意を求めた。
あれだけのハルの魔法攻撃でも破壊出来ない壁なのである。
「もう一度だ。」
悔しさからなのか、ジャスティンは誰にともなく呟いた。




