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砂ぼこりと噴煙が通路を覆い、視界が数十センチ程になる。
「…っ、もう少し何とかならんのかっ!」
口元を庇いながら、ジャスティンが不快さを訴えていた。
「やれと言ったのは、フラトンさんですよ。」
一方で平気な顔で口答えをするハルは、当たり前ながら防御魔法で自身を守護している。
つまりは、外部の大気汚染の影響を全く受けていないのだ。
「あ、お客さんが来ましたよ。俺はこの壁を壊してるんで、そっちはフラトンさんにお願いしますね。」
嫌味を乗せてハルが告げる。
ちなみにジャスティンは武器として、この狭い空間用のパリングダガーも装備していた。
この剣は主に、攻撃受け流しを目的とする。波打った刃が敵の攻撃を受けやすくするのだ。
「…やむを得ないか。」
命令される事がそれ程嫌なのか、舌打ちまでしそうなジャスティンである。
それでも騎士としての矜持がある為か、腰にはいた剣を抜いた。
同時に、目前に立ち塞がるインセクトレイド達が視界に入る。
「それにしても固いな、この壁。…火炎弾。」
再度、複数の火の玉を壁に向けて飛ばすハル。
魔力量を増した為、先程よりも強烈な魔法攻撃となって壁に当たった。
「煩いぞ、魔術師!」
苦情がジャスティンから飛ぶ。
先程よりも威力が増した分、爆音と粉塵が凄まじかった為だ。
「仕方無いですよ、フラトンさん。これ、思ったより固いんですから。」
しっかりと返答をしながら、内心では舌を出しているハル。
実際にはジャスティンに防御魔法をかけてあげれば済む話だが、粉塵などに命の危険があるでもなし。
些細なハルの嫌がらせだろう。
「お?欠けて隙間が大きくなった…っ?!」
幾度目かの魔法攻撃に、漸く隙間が少しだけ広がった。
ハルは焼け焦げたそこに指を入れ、抉じ開けてみる。
だが、それも中の様子が垣間見られた事で止まってしまった。
「どうした、魔術師っ。」
離れた場所でインセクトレイド達と戦闘を行っているジャスティン。
ハルの様子が気になったのか、武器を振るいながら声をかけてくる。
「あ~…、ここに三人がいます。」
誰とは告げなかったが、それでも伝わる筈だ。
ジャスティンが探しているのは貴族だけなのだから。
「見つけたかっ?!邪魔だ、虫共っ!」
すぐに自身で確認したいところなのだろうが、インセクトレイド達の方も必死の抵抗をしてきていた。
ジャスティンの振り回すパリングダガーを、インセクトレイド達は粗末な武器で受け止めようとしている。
「魔術師!」
「はいはい。…火炎弾。」
苛立ちを乗せてジャスティンが叫び、ハルは嫌々その手助けをする為に魔法を放った。




