表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
昆虫人
59/322

59

「だが、ソーントン男爵家のご令嬢方はどうなる。」


 ジャスティンの心配は、やはり平民ではないのだ。


 分かってはいるものの、溜め息をつきそうになるハル。


「人間の女性を雄が(なぐさ)みものにする事は聞いた事がありますが、今回は産卵準備と仮定すれば新女王の餌かと思われます。若い年頃の人間の女性が、孵化した次期女王候補幼体の唯一の餌ですからね。」


 淡々と答えるハルだが、貴族であろうとそうでなかろうと、人が魔物に喰われる等は許せる事ではない。


「次期女王候補幼体の餌…。」


「俺も知識の上でしか知りませんが、鮮度が大切なのだとか。…だからまだ生きていると思われます。」


 全く無事な姿とは言い難いが、そこはあえて伏せておくハルだった。


「捜索魔法は使わないのか。それとも、もう使っているのか。」


 不意に気になっていたのか、ジャスティンから問い掛けてくる。


「まだです。これだけ道が真っ直ぐですからね。迷いようもないですよ。」


 軽く後ろを振り返って笑顔を見せるハルだが、実際には得意でもない(レイ)の魔法と負担の大きい捜索魔法は同時に扱いたくはなかった。


「それもそうか。」


 だがそんなハルの内心を知らず、妙に納得した様子のジャスティンである。


 ちなみに彼は光魔法も捜索魔法も使えない為、ハルの言葉の真意には気付けないのだ。


「あ…、何か聞こえますね。」


 進む足を止め、ハルは前方に耳を澄ます。


 通常の聴力で聞こえる物音だった。


 この巣穴に入って、(ようや)く何かとの遭遇である。


「人…か?」


 ジャスティンが怪訝(けげん)な顔をしてみせた。


 ここはインセクトレイドの巣穴の中腹部。人がいるとすれば、連れ去られた者達である。


「行ってみましょう。」


 言葉と同時にハルが先へ進んでいった。ジャスティンもすぐに後をついてくる。


 二人が角を曲がると、すぐ先から灯りが漏れ出ている部分があった。だが壁の割れた隙間から光と音が漏れ出てきただけのようで、とても入口とは呼べない代物。


「壊して良いですか?」


 さすがに壁を破壊すれば、中からインセクトレイドが出てくる可能性は高くなる。


「やれ、魔術師。」


 ジャスティンは何故問うのだとばかりに、嫌そうな顔で片方の眉を上げた。


「…ふぅ。承知しました。…火炎弾(ファイラ)。」


 思わずカッとなりそうなのを何とか呑み込み、大きく息を吐いて気持ちを抑えるハル。


 そして内心の(くすぶ)る怒りを込め、複数の火の玉を壁に向けて飛ばす。


 派手な音が響くのでどの様にしても気付かれるこの際、形振(なりふ)りを構っている場合ではないと判断したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ