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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
昆虫人
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■□■


 クラウディアとジミーをインセクトレイドの巣穴外に残し、ハルはジャスティンと共に岩場に開けられた洞窟へと入っていく。


「…照明(ライト)。」


 ハルの光魔法で、薄暗い横穴は前後10メートル程が屋外のように明るく照らされた。


 照らす範囲は魔力の込め方で変わる。


(レイ)の魔法も使えるのか。」


 硬い声で問い掛けてくるジャスティン。


 ハルの後ろ、一定距離以上近付いては来ないのだが。


「そりゃ、ないよりはあった方が良いですよね。」


 それほど得意ではないのだが、ハルはあえて口にしなかった。


 自らの手の内を(さら)すのは愚かである。


「それにこんな狭い横穴じゃ、火を()いたら俺達の空気の方が危ないです。」


 おどけて両手を軽く上げて見せたハル。


 だが実は、ジャスティンを(ひき)いるように前を歩きながらも、ハルは一瞬たりとも気を抜けないでいた。


 ジャスティンの武器であるクレイモアは、その大きさからこの洞窟の中で振り回すには向いてない。


 それでも、気を許した訳でもない者を(みずか)らの背においているのだ。


 ましてや、自分に好意を(いだ)いていないと分かっている相手を。


「…そうか。」


 ジャスティンは一言だけ答えた。


 そしてそのまま、無言で二人は歩く。


 いつの間にか周囲は岩ではなく、泥を加工して造り上げた外壁に変わっていた。


 それはインセクトレイド独特の巣穴形成方法であり、一度土を口に含んでから、体液と共に吐き出して造る。その固さは泥より石に近く、叩いても簡単に崩れはしない強度を持っていた。


「巣の中腹に来たって事ですね。…けど、おかしいな。」


 周囲に警戒を払いながらも、ハルは顎を手で()れるように呟く。


 自分達の足音と風の音しか聞こえない横穴では、その小さな呟きすらジャスティンの耳に届いた。


「何がだ。」


「あ、いえ…。インセクトレイドって巣の外の兵隊員は勿論ですが、巣の内部に多くの作業兵を配置している筈なんです。本来、この巣穴自体が一種の城塞となっているんですよね。」


 ハルは、昔に父親(ジェイラス)から聞いた事を思い出す。


「何…?」


 (いぶか)しむジャスティン。


「これ…、結構ヤバイかもですね。」


 知識が警告を発していた。


「インセクトレイドって、蜂なんかと一緒で分蜂(ぶんぽう)…つまりは巣別れをするんですよ。この様子だと、分蜂した後の新女王の産卵準備中ですかね。そもそも、外に兵隊員があれだけですむ筈がないんです。」


「つまりは、奪われた人馬は巣別れの為の輸送用と言うのか。」


 あまりにも静かな巣の中、ハルは緊張した面持ちで頷く。


 そしてインセクトレイドはこの時期、非常に攻撃性が増すのだ。次の巣作りの為に慌ただしく動くからである。


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