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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
昆虫人
55/322

55


「…っ…、バカっ!こっちの心の準備が済むくらい待ちなさいよねっ?!」


 だが、ひきつった顔で涙目になっていたクラウディアに怒鳴られ、ハルはキョトンとしてしまう。


 飛ぶ事に慣れていないクラウディアは、急な上昇や降下に精神的耐性がないのを忘れていたのだ。


「アンタ、危ないじゃないのさ。思わず狙って攻撃をするところだったよ。」


 ジミーにもクロスボウを向けられ、(さら)にその背後にジャスティンの刺すような銀色の瞳が見える。


「何、俺…そんなに悪い事してないよね?」


 軽く両手を上げ、ハルは()に落ちないながらも降参の姿勢をとった。


「…飛ぶ事も出来るのか。つくづく人間離れしているな、魔術師。」


 射殺しそうな視線でハルを見るジャスティンは、先程までとは少しだけ態度が違っている。


「何ですか、ヘイリー姉さん。フラトンさんを説得でもしてくれました?」


 こっそりジミーに問い掛けるハル。


「煩いね。アンタの為じゃないんだから、勘違いしないでくれる?パーティー内がギスギスしてたら、私がやりにくいだけなのっ。」


 フンと鼻を鳴らし、目前に迫るインセクトレイドに(クォーラル)を撃ち込んだ。


「そうですか。…ありがとうございます。では、その期待に添うよう頑張りますね。…集団(アグリゲート)強化(レインフォース)(ブレイズ)。」


 ハルはニッコリ微笑むと、パーティーメンバーへ強化魔法をかける。そして全員の身体が赤い光に包まれ、魔法が完了した事を知らせた。


「…チッ。」


「やるなら早くやりなって。」


「さすがね、ハル。ギルド(いち)…いえ、王国(いち)の魔法の使い手って言う噂は伊達(だて)じゃないのね。」


 忌々(いまいま)しそうに舌打ちをしたジャスティンと、何か言わなきゃ気がすまないジミーだったが、クラウディアは手放しで()(たた)える。


「そう()められると照れちゃうな。…風刃(ソード)。」


 クラウディアの言葉を素直に喜んだハル。


 そのまま突進してきたインセクトレイドに、軽々と風の刃をお見舞いした。


「魔法は補佐的手段に過ぎない。」


 ジャスティンはそう告げ、己の武器である両手持ちの大剣を振り回して鼻で笑う。


 通常ハンターは、武器での討伐を主流としていた。よって魔法戦を主流とするハンターは彼等の考えでは異端であり、更にハルを孤立させるものだったのである。


 しかしながらハルの戦闘方法は父親譲りであり、父親も魔法能力が高かった事を示していた。


 つまりは変える気がない。


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