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「…っ…、バカっ!こっちの心の準備が済むくらい待ちなさいよねっ?!」
だが、ひきつった顔で涙目になっていたクラウディアに怒鳴られ、ハルはキョトンとしてしまう。
飛ぶ事に慣れていないクラウディアは、急な上昇や降下に精神的耐性がないのを忘れていたのだ。
「アンタ、危ないじゃないのさ。思わず狙って攻撃をするところだったよ。」
ジミーにもクロスボウを向けられ、更にその背後にジャスティンの刺すような銀色の瞳が見える。
「何、俺…そんなに悪い事してないよね?」
軽く両手を上げ、ハルは腑に落ちないながらも降参の姿勢をとった。
「…飛ぶ事も出来るのか。つくづく人間離れしているな、魔術師。」
射殺しそうな視線でハルを見るジャスティンは、先程までとは少しだけ態度が違っている。
「何ですか、ヘイリー姉さん。フラトンさんを説得でもしてくれました?」
こっそりジミーに問い掛けるハル。
「煩いね。アンタの為じゃないんだから、勘違いしないでくれる?パーティー内がギスギスしてたら、私がやりにくいだけなのっ。」
フンと鼻を鳴らし、目前に迫るインセクトレイドに矢を撃ち込んだ。
「そうですか。…ありがとうございます。では、その期待に添うよう頑張りますね。…集団・強化・火。」
ハルはニッコリ微笑むと、パーティーメンバーへ強化魔法をかける。そして全員の身体が赤い光に包まれ、魔法が完了した事を知らせた。
「…チッ。」
「やるなら早くやりなって。」
「さすがね、ハル。ギルド一…いえ、王国一の魔法の使い手って言う噂は伊達じゃないのね。」
忌々しそうに舌打ちをしたジャスティンと、何か言わなきゃ気がすまないジミーだったが、クラウディアは手放しで褒め称える。
「そう誉められると照れちゃうな。…風刃。」
クラウディアの言葉を素直に喜んだハル。
そのまま突進してきたインセクトレイドに、軽々と風の刃をお見舞いした。
「魔法は補佐的手段に過ぎない。」
ジャスティンはそう告げ、己の武器である両手持ちの大剣を振り回して鼻で笑う。
通常ハンターは、武器での討伐を主流としていた。よって魔法戦を主流とするハンターは彼等の考えでは異端であり、更にハルを孤立させるものだったのである。
しかしながらハルの戦闘方法は父親譲りであり、父親も魔法能力が高かった事を示していた。
つまりは変える気がない。




