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「ちょっと…、顔色が悪くない?」
怖々問い掛けてくるクラウディア。
そして隣に並ぶハルの額には、何故だか玉のような汗が浮いている。
「…大丈夫だよ。まだ落ちないし。」
「っ?!」
「冗談だって。もうすぐだから、とにかく静かにしておいてくれるかな。」
ハルの答えに息を呑んだクラウディアに、フッと笑ってから小さく溜め息をついた。
捜索魔法の負担が、ハルの予想よりも大きかったのである。
洪水のように押し寄せる音の波の中、眼下に見える森を睨んだ。
「森って…、存外生き物がいるんだねぇ。」
辛そうに細く息を吐き、ターゲットが停止するのを感じとるハル。
生物が多ければ多い程に障害となる雑音が増えるので、術者への負担が比例するように増す。
「やっと止まったよ。…でもまさか真ん前に降りる訳にもいかないだろうし、少し距離を離すよ。…ん?どうしたの、クラウディア。」
目的地がハッキリとした為、ハルは捜索魔法を解除した。
少しだけ頭痛が収まり、隣のクラウディアの様子がおかしい事に気付く。
「…静かにしておいてって、ハルが言ったんじゃない。」
ムスッとしたままのクラウディア。
だが、心なしか瞳が不安に揺れていた。
「あ…、ゴメン。不安にさせたね、俺。もう大丈夫だから…って、ダメ?」
ニッコリと微笑んで見せるが、クラウディアの表情は硬いまま。
「ん~…。あまりここにいると、色々と面倒だよ?」
不意に視線を逸らしたハル。
その先を追うようにクラウディアが同じく視線を動かす。
「っ?!」
予想もしていない自体に息を呑むクラウディア。そしてすぐ真横を、一本の矢が通り過ぎていった。
眼下では既にインセクトレイドとジミー、ジャスティン組の戦闘が行われている。
「ほら、こっちも狙われてる。どうする?」
他人事のように小首を傾げるハルだったが、勿論彼にも攻撃の矢尻は届いている。
ただ何かに弾かれるように甲高い音を発し、それらは空しく落ちていくだけだった。
ちなみにハルは敵発見時、即座に強化魔法を発動している。
「あ、あなた一体…って、それどころじゃないわ!危険ならどうにかしなさいよっ。リーダーでしょ?!」
思い切りハルの背に隠れ、クラウディアは叫んだ。
その間、確実に攻撃の手は上空にいるハルとクラウディアにも向けられ、インセクトレイドの弓取りから的にされている。
「都合の良いリーダー呼称だなぁ。」
「う、煩いわよっ。大体、私はハルがリーダーなのに反対してないんだからね?」
「あ…、そう言えばそうだったね。んじゃ、とりあえず降りようか。」
クラウディアの言葉に頷きながら、ハルはジミー達の傍に急降下して降り立つ。
勿論、クラウディアも強制的に引き連れていかれたのだった。




