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「でも、必要以上私に触れるのは、厳重注意ものよね。」
不意に思い出したかのように、クラウディアはハルに鋭い視線を向ける。
一瞬首を傾げたハルだが、先程の目元への接触等の事だと気付いた。
「俺は俺のやりたいように行動するだけだよ。クラウディアだって、王女として扱われたくはないんだろ?」
ハルはクラウディアの言を都合の良いように解釈をする。
これは当たり前なのだ。言質は時として、己へ向ける刃にもなる。
「それは…、そうだけど。」
「なら、問題ないじゃん。俺は女性に喜ばれる事をするだけさ。あ、触られるのが嫌なら勿論しない。先に言って。」
ニッコリと人の良さそうな笑顔を見せるハルだ。
本当はクラウディアに好意を抱いているのだが、それを悟られたくはないらしい。
「…本当にあなたって、女性の扱いに慣れているのね。でもまぁ…私はハルにお礼をしたいだけなのだから、あなたの女性歴に口を出すつもりはないわ。それに…触られるのが嫌なら、既に叩いてるわよ。」
不機嫌そうに顔を背けたクラウディアは、滑るようにハルから距離をとった。
「それはどうも。けど俺に着かず離れずの距離を保つなら、俺の魔力の恩恵はいらないんじゃない?」
ハルは同じように滑るようにクラウディアの目の前に移動すると、ニヤリと挑発的な表情を浮かべる。
実際にクラウディアが今使用しているようにみえる浮遊魔法は、実はハルの魔力なのだ。
「これは良いの。私は浮遊魔法なんて持ってないんだし、パーティーとしての権利でしょ?」
だが、クラウディアも負けてはいない。
パーティーメンバーが、チーム内で魔力の補助を得られるのは事実だ。
「…さすが、ハンターランクCは飾りじゃないね。」
フッと笑みを溢し、クラウディアから離れるハル。
彼女は自身の力で現在のランクになれたか疑問に思っているようだが、いくらジャスティンが強いと仮定してもたった一人のサポートでは限界がある。
つまりは、それなりにクラウディアの能力も関係しているのだ。
「あ、クラウディア。前のギルドでパーティーを組んでいたのって、フラトン卿だけ?」
「そうよ。他の人は信用出来ないし、説明が面倒だもの。あ…でも、その言い方は間違いね。ジャスティンは爵位を持っていないもの。」
「あぁ、三男だっけ。でも侯爵家出身なのは間違っちゃいないだろ?」
ハルの意味深な言い方に、クラウディアは少しだけ眉を寄せる。
「私、権力を嵩に懸かる人も気に入らないけど、劣等感の塊みたいな考え方をする人も嫌いなの。覚えておいて。今のハンターである私とジャスティンは、あなたと同じ。ただのハンターよ。」
真っ直ぐハルに視線を向け、クラウディアはハッキリと告げた。




