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「ん、分かった。ゴミが目に入ったんだね。」
「っ、ちょ…っ!?」
突然ペロリと目元を舐められ、クラウディアは魚のように口をパクパクと開閉させるだけである。
「ゴミが目に入ったのはたぶん、俺のせいだからね。だから、消毒。」
「く、口の中の方がバイ菌一杯なんだからっ。」
ニッと笑みを浮かべて告げるハルに、クラウディアは真っ赤になりながら叫んだ。
「そうなの?でもこれをすると、大概の女性は喜んだんだけど。それに、人は人とキスするでしょ。あ、人以外とキスする人もいるか。」
どうでも良い事を言い出すハル。
それでもクラウディアの腰辺りをしっかりと支えている。少しでも彼女の恐怖を取り除く為でもあった。
先程よりは慣れてきているようだが、まだクラウディアの手は小さく震えていたのである。
「も、もう良いわよ…。」
照れが残っているからか、クラウディアは上目遣いでハルに視線を向ける。
「ん?」
何か言いたそうなクラウディアに、ハルは柔らかく笑みを浮かべながら首を傾げる事で問い掛けた。
「あの…放しても、落ちない?」
意を決して、といった感じの問い掛けをしたクラウディア。
「可愛い。」
ハルはクラウディアの額に唇を落とす。
「俺を信じて。」
微笑みかけ、彼女に何か言われる前にハルはゆっくりと力を抜いて手を伸ばした。
足が地についていないのが不安なのか、クラウディアは緊張の面持ちである。それでも何も言わず、静かに放れていくハルの腕を見ていた。
「…浮いてる…っ。」
「ん。」
「凄い…私、浮いてる!」
「ん。浮いてるね。」
ハルは宙で跳ねるような動きをするクラウディアに、愛おしむような柔らかい笑みを向ける。
自身では気付いていないのかもしれないが、確実に心を引かれているようだった。
「俺の魔力で浮遊しているけど、ある程度の自由なら利くから。」
「そうなの?凄いじゃない、ハル。私、こんな魔法は持っていないわ?」
ハルの言葉を受け、右へ左へと自在に身体を飛ばすクラウディア。
魔法は経験を積んで能力値をあげていくものなので、同一系統を使い続ければその系統が底上げされるのである。
「ハンターとしては、攻撃も防御も身に付けないとならないからね。何か一つに特化する事は悪くないけど、選択次第ではパーティーを組まないとやってられなくなるし…。俺の場合は、この世界に身を置いたのが早かったからだよ。」
「そうなの?私はジャスティンとパーティーを組んで依頼を受けていたから、この今のランクも自分自身のものかと言えば首を傾げちゃうのよね。」
腑に落ちないクラウディアだったが、実際に強いハンターとパーティーを組んでのランク上げも可能なのだ。




