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「だから私、ハンターになったの。」
ハッキリと言葉にするクラウディア。
「…いやいや、普通の女性はその発想をしないと思うんだけどね。」
ハルはその時の事を想像して笑顔を浮かべる。
この直情、即行動型のクラウディアだ。
切っ掛けは大した事ではないにしろ、目標と定めた事に全力で突っ走るだろう。
「そうなの?私は自分だけの力で生きていくハンターが、凄く魅力的だったのだけど。」
クラウディアは、ハルの反応が不思議とばかりに首を傾げた。
「で、実際にやってみてどうだった?」
「そうね…。楽しいけど、ハンターギルド・ノーブルはダメね。」
僅かに考えたクラウディアは、迷わず答える。
ハルは思わず笑ってしまった。声を押し殺してではあるが、いつもの上辺の表情だけの笑みではない。
「くくくっ、本当に面白い。」
「何よ、それ。」
笑いながら告げるハルに、クラウディアは少しだけ不満そうだった。
自分の何が面白いか理解出来ず、バカにされているような気になったのかも知れない。
「…さてと。そろそろ本気を出して追うかな?」
一頻り笑った後、ハルはグッと一度大きな伸びをした。
「本気って、どういう事?この走っている状況って、追跡中なんじゃないの?」
怪訝な顔をするクラウディア。
だがそれには答えず、ハルはニッと笑みを見せる。
「クラウディア、高いところは大丈夫?」
「え…えぇ…、まぁ…。」
理由が分からない為、曖昧な返答になるクラウディアだった。
「ん。じゃあ、ヘイリー姉さんとジャスティンにかなり先に行かれちゃったからね。遅れを取り戻すよ?…風翼。」
「そうなの?って、…っきゃあああああっ!!」
最後にニッコリ笑ったハルは、クラウディアの理解がついてきていないのを承知で飛行魔法を発動させる。
勿論宙に浮くとは思ってもいなかったクラウディアは慌て、ハルの首に加減なしにしがみついた。
「っ…く、苦しいんだけど…っ。」
ハルは絞首されそうで、ポンポンとクラウディアの腕を軽く叩いて合図する。
いくら防御魔法を発動していても、継続的に与えられる圧力には強くないのだ。
「だっ、だって!」
「っ?!」
大きな金色の瞳に浮かぶ涙に気付き、ハルの方が息を呑んだ。
そしてかなり高度を下げ、ソッとクラウディアの頬に触れる。
「ごめん、泣かすつもりはなかったんだ。」
申し訳なさそうにハルが謝罪をして、初めてクラウディアは自分の涙に気付いた。
「な、泣いてなんかないわよっ?!ただ、ゴミが…そう、ゴミが目に入っただけよっ。」
必死に顔を逸らし、ハルの視線から逃れようとする。
それでも手を離さないのは恐怖からで、クラウディアはしっかりとハルの首元に腕を回していた。




