44
「あの時のオーク…、そんなに経験値高いなんて知らなかったよ。何か私、バカハルに一杯食わされた気分だね。」
ブツブツと呟くジミー。
一行は簡易テントを張り、風壁と防音で作ったハルの結界内で待機、今回のターゲットである魔物が現れるのを待っている。
「いや、別にオークだけじゃないですけど…。決定打はそれだったって言うかですね。」
実際には、ハルの記録媒体に記憶された累計が基準点を越えたのだ。
「それに、俺は実質まだCランクハンターなんですよ…。」
言い訳にしかならない事は分かっているハル。
同一ランク最高位になった際、次のランクに上がる為の試験がある。それをクリアする事で、本当の意味でランクが上がるのだ。
「そんなの、どちらでも良いわ。ハルが私より強ければそれで良いの。嫌よ?自分より弱い男とパーティーを組むなんて、それこそ論外だわ。」
クラウディアは胸を張ってそう断言する。
彼女は空気を読む事なく、自らの考えに従って生きているようだ。何とも勇ましい。
「それはともかく、インセクトレイドの目的が何か分かっていないのかい。」
偉ぶっているクラウディアをよそに、ジミーがハルに問い掛けた。
「それですが、今回明らかにされている情報は少ないんです。被害報告を見る限りでは、野菜などの食物から酒等が主です。」
ハルは視線を手元に移し、アンディから予め用意されていた書類を簡単に読み上げる。
「それって、ただの冬籠もりの準備じゃないか。蟻なんかもやるだろう。」
ジャスティンが呆れたように口を出した。
「いえ、ただ食料集めだけならそう思えなくもないんですけど…。ソイツ等、馬と御者も奪ってるんです。」
依頼書へ一度視線を落とし、改めてジャスティンに真っ直ぐ視線を向けるハル。
その言葉に、一瞬テント内が沈黙する。
「…いや、その人間も馬も食われてる。」
「フラトン様。そう断言するのは早くはないですか?」
ジャスティンの負け惜しみのような発言は、何故だか真剣な表情を浮かべるジミーに止められた。
「ヘイリー殿、何故ですか。インセクトレイドも亜人種です。雑食で、それこそ何でも食べる筈です。」
「それは否定しません。ですが幾度も商人を襲い、食料と一頭の馬、そして御者を一名しか略奪しないのです。他の人馬には目もくれません。そうだよね、ハル。」
「あ、はい。ヘイリー姉さんにも、先にこの書類へ目を通して貰っています。今回はクラウディアとフラトンさんの能力判定も伴っていますので、そこのところはご留意くださいますようお願いします。」
魔物に詳しい理由はないと言い張るジャスティンだったが、ジミーは予め知っている情報からの違和感を伝える。
ハルはジャスティンの間にジミーを挟む事で、直接的に負の感情を向けられないようにしていた。
貴族の血が流れているジミーとなら、ジャスティンと会話がまともに成立しているようなのである。




