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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
昆虫人
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「あの時のオーク…、そんなに経験値高いなんて知らなかったよ。何か私、バカハルに一杯()わされた気分だね。」


 ブツブツと呟くジミー。


 一行(いっこう)は簡易テントを張り、風壁(シールド)防音(サウンド・ブース)で作ったハルの結界内で待機、今回のターゲットである魔物が現れるのを待っている。


「いや、別にオークだけじゃないですけど…。決定打はそれだったって言うかですね。」


 実際には、ハルの記録媒体(カラー)に記憶された累計が基準点を越えたのだ。


「それに、俺は実質まだCランクハンターなんですよ…。」


 言い訳にしかならない事は分かっているハル。


 同一ランク最高位になった際、次のランクに上がる為の試験(クエスト)がある。それをクリアする事で、本当の意味でランクが上がるのだ。


「そんなの、どちらでも良いわ。ハルが私より強ければそれで良いの。嫌よ?自分より弱い男とパーティーを組むなんて、それこそ論外だわ。」


 クラウディアは胸を張ってそう断言する。


 彼女は空気を読む事なく、自らの考えに従って生きているようだ。何とも(いさ)ましい。


「それはともかく、インセクトレイドの目的が何か分かっていないのかい。」


 偉ぶっているクラウディアをよそに、ジミーがハルに問い掛けた。


「それですが、今回明らかにされている情報は少ないんです。被害報告を見る限りでは、野菜などの食物から酒等が(おも)です。」


 ハルは視線を手元に移し、アンディから(あらかじ)め用意されていた書類を簡単に読み上げる。


「それって、ただの冬籠もりの準備じゃないか。蟻なんかもやるだろう。」


 ジャスティンが呆れたように口を出した。


「いえ、ただ食料集めだけならそう思えなくもないんですけど…。ソイツ等、馬と御者も奪ってるんです。」


 依頼書へ一度視線を落とし、改めてジャスティンに真っ直ぐ視線を向けるハル。


 その言葉に、一瞬テント内が沈黙する。


「…いや、その人間も馬も食われてる。」


「フラトン様。そう断言するのは早くはないですか?」


 ジャスティンの負け惜しみのような発言は、何故だか真剣な表情を浮かべるジミーに止められた。


「ヘイリー殿、何故ですか。インセクトレイドも亜人種です。雑食で、それこそ何でも食べる筈です。」


「それは否定しません。ですが幾度も商人を襲い、食料と一頭の馬、そして御者を一名しか略奪しないのです。他の人馬には目もくれません。そうだよね、ハル。」


「あ、はい。ヘイリー姉さんにも、先にこの書類へ目を通して貰っています。今回はクラウディアとフラトンさんの能力判定も(ともな)っていますので、そこのところはご留意(りゅうい)くださいますようお願いします。」


 魔物に詳しい理由はないと言い張るジャスティンだったが、ジミーは(あらかじ)め知っている情報からの違和感を伝える。


 ハルはジャスティンの間にジミーを挟む事で、直接的に負の感情を向けられないようにしていた。


 貴族の血が流れているジミーとなら、ジャスティンと会話がまともに成立しているようなのである。


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