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「何も出てこないわね。」
周囲を見回し、不満げに告げるクラウディア。
今は王都トラヴィスから僅かばかり離れた街道沿いの平原に、何故だか不揃いな四人で立っている。
「今回の依頼では、インセクトイドが商人を襲うからって事での討伐指示ですね。」
ハルは依頼書を見ながら答えた。
「昆虫の姿をした亜人種なんて、商人の何が狙いなのさ。って言うか、私はブラックバーンさんに言われたから仕方なく来ただけだからね。」
不満を紡ぐジミーは、アンディからの指示でなければ断っていただろう。
「私とて同じです。侯爵家次男のヘイリー殿は別として、何故に市井の者と共に狩りなど…。」
違った意味で不満を告げるのはジャスティンだ。
彼は貴族の血が一滴も流れていないハルの事が気に入らない。と言うか、そのハルをクラウディアが気に入っているかもしれないのが気に入らないのだ。
「煩いわよ、ジャスティン。ハルは私の命の恩人なの。次にハルの事を市井の~とか言ったら、あなたの事をお父様に言って配置代えさせちゃうから。」
クラウディアの不機嫌の理由は、ジャスティンにもあったのである。
事あるごとにハルの事を蔑むジャスティンの言葉は、現在に至る自分の周囲に存在する地位や権力に固執したその他の貴族の言と変わらないからだ。
「…申し訳ございません、クラウディア様。」
「だから、今の私はハンターなの。王城にいる時ならまだしも、城から出たらただのクラウディアよ。」
胸に手を置いて頭を垂れるジャスティンに、苛立ったようにクラウディアが噛み付く。
「まぁまぁ…落ち着いてよ、クラウディア。でも俺とヘイリー姉さんは知ってるから良いけど、他のギルドメンバーはクラウディアが王女って明かさないんだろ?」
「そうよ?面倒じゃない。」
ジャスティンとの間に入って中を取り持つハル。
それでもクラウディアは自分の意見を曲げないのだ。
「だったら、フラトンさん。俺の事を嫌うのは構わないですけど、彼女に嫌われるのはあなたも本意ではありませんよね?もう少し穏便にいきません?」
ハルはジャスティンに笑顔を向ける。
とりあえず今のところこの四人がパーティーなのだし、仲違いをしていてはいざと言う時に対処が遅れる懸念もあった。
「私は、お前がリーダーなのも気に入らない。」
鋭い銀色の瞳で睨まれ、ハッキリとジャスティンに告げられる。
「あ、それは私も同感。アンタは何で…、いつの間にBランクになってるのよ。腑に落ちないじゃないのさ。」
ジミーもジャスティンの言葉に同意していた。
そもそも彼が気に入らないのはハルと一緒だから、なのだが。
「あ~…、オーク退治だったりしたら怒ります?」
困ったような表情を浮かべつつハルが答えると、一層憎しみを増した視線をジミーから向けられたのであった。




