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「全く…、ギルド内で問題を起こすなよ?」
容認の形をとったアンディに、ジャスティンとジミーの鋭い目が突き刺さる。
「何を仰いますか、ブラックバーン殿。クラウディア様は大切な御身。いずれ他国へと嫁いで行かれる身ですぞっ!」
「そうですよ、ブラックバーンさんっ。そこらの女と遊ぶだけではもの足らず、このバカハルは王女まで汚すつもりですよっ。」
二人に食って掛かられ、アンディは少しだけ困った表情を浮かべていた。
「あの…さ。クラウディアは何でわざわざギルドまで移籍したの?」
「あら、そんなの決まってるじゃない。お父様に言われてノーブルに所属していたけど、良い噂がないからやめるって言ってやったの。ここに移籍したのは他に知らなかったし、何よりハルがいるからよ?」
その脇で繰り広げられるホンワカな会話。
「つまりは…クラウディアも?」
「何言ってるの?私はあなたにお礼がしたかっただけ。何か問題ある?」
戸惑うハルだが、クラウディアはあくまで一直線である。
向けられた興味は好意でないようだ。
「お礼…って、いや…ないけど…。」
「大有りですっ!」
そこへ大きな身体が割り込んできた。
「何よ、ジャスティン。あなただけは私の味方だと思っていたけど?」
「姫、なりません。戯れにハンターギルドに所属するだけではもの足りず、あまつさえこの様な市井の者に心を許すなどあってはならない事ですっ。」
問い掛けるように視線を向けたクラウディアだが、ジャスティンは必死に否定する。
恐らく、それも彼の任務であるのだろうと思われた。
「姫って呼ぶの、嫌いって言ったでしょ。私はもう15歳よ?子供じゃないの。って言うか、心を許すって何の事よ。可愛いって言われて喜んじゃダメな訳?」
「淑女でしたら尚更、この様な場所で武器を手に暴れ回るものではありませんっ。」
ジャスティンは大きな身体を縮め、クラウディアに視線を合わせるように言葉を紡ぐ。
都合の悪い後半の彼女の問い掛けは、聞いていなかった事にしたようだ。
「もぅ、私の味方じゃないジャスティンは嫌いよ。」
「クラウディア様っ…。」
二人の口論に終末が見えた。
ジャスティンの完全なる敗北である。
「…馬鹿馬鹿しいやり取りだね。」
一部始終を見ていただけに、ジミーは呆れ果てて近くの椅子に腰掛けてしまった。
「ハル。身辺整理をしないとならない時期が来たな。」
アンディは静かにハルに告げる。
「アハ…ハハ…ハ…。」
引き攣った笑みになるハル。
ちなみにハルには特定の彼女はいないものの、温かい食事と寝床を提供してくれるご婦人方が、それはもうあちらこちらにいるのだった。
「そうだ、ハル。良い事を教えてやろう。貴族でなくとも、高位ランクのハンターになれば爵位を受ける事が出来るぞ。Aランク以上だがな。」
思い出したかのようにアンディが告げる。
「ハハ…そんな情報、今はお腹一杯って感じですね。」
ハルは大の男を項垂れさせている少女に視線を向け、今後の自分の無事を祈るのであった。




