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「私はジャスティン・フラトンと申します。」
銀髪が口を開く。
だがその銀眼は鋭い光を湛えており、一分の隙もない。
「私はディアよ。」
最後に赤茶色の髪の少女が名乗った。
しかしながら、名の大部分は秘されている。
「アンタ、名前くらいキチンと名乗りなよ。」
当たり前ながら、ジミーはそれに食って掛かった。
だが、それも想定済みなのだろう。
ディアと名乗った少女は、可憐ながらも妖艶な笑みを浮かべる。
「あら、何故私が名を明かさなくてはならないの?」
「なっ…、アンタねぇっ!そこのフラトン侯爵家三男様が名を明かしたんだよ…っ?」
「やめた方が良いですよ?」
ディアの売り言葉に乗せられ、ジミーは一層頭に血が上った。
だが思い切り牙を剥き出して叫んでいる途中で、何故かハルに肩を引かれて止められる。
「何でさっ!」
「この子…、国王が第2子。クラウディア・オーウェン・ロイド様本人ですからね。」
「っ?!」
ハルにまで噛み付こうとしたジミーだったが、続けられた言葉に息を呑んだ。
「あら、気付いてたの?さすがね、ハル・クロフォード。」
挑発するような笑みを浮かべたディアこと、クラウディア。
ハルはそれに対し、再度大きく溜め息をつく事で、自身の波立つ感情を打ち消す。
「だから俺、聞こえたって言ったでしょ。知ってるも気付くもないんだ。それに…、何故ここに来たのさ。」
他のどんな人にも丁寧語で話すハルだが、クラウディアは年が近いからか、そうしなかった。
「だって…、あなたが私にお礼をさせないからでしょ?」
「言葉でもらったから良いよ。」
僅かに拗ねたようなクラウディアに、ハルは柔らかい笑みを見せる。
「ハルは…ハルが冷たいのは、私が王女だと知ったからでしょ。」
クラウディアの追求はやまず、ハルは困ったような表情を浮かべた。
それでも答えないハルに、とうとうクラウディアの金色の瞳が潤みだす。
「仕方ないだろ?王女様じゃ…、いくら可愛いと思っても報われないんだから。」
半ば絞り出すように告げられたハルの言葉。
「は?」
「え?」
「な…?」
「っ?!」
周囲の目が点になった。
「お前っ。」
「てめぇ!」
「ハル…っ。」
「本当に?」
ジャスティンが…ジミーが怒りを浮かべ、アンディが額に手を置いた時、何故か嬉しそうなクラウディアの声が響く。
「ハル、本当なのっ?本当に可愛いって思ってくれてる?」
「あ~…、うん。…え?可愛いって言うの、ダメだった?」
再度クラウディアに問い詰められ頷きながらも、ハルは勢いで言ってしまった言葉へ既に後悔を見せていた。




