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翌朝のハンターギルド。
「こら~っ!逃げるな、卑怯者っ!待て~、ハルっ!」
「いやいや、誰だって逃げたくなるって!ヘイリー姉さんってば、鬼の形相~っ!」
いつにも増して激しい、追い駆けっこ付きのハルとジミーである。
周囲のギルド員達は、皆が笑いながらその様子を見ているだけだった。
「やめないか、ジミー、ハル。」
ギルドマスターのアンディが出てきて、二人の首根っこを掴んだ事により漸く静かになる。
「ブラックバーンさん、ハルの奴がですねっ。」
「だって俺、承諾してないですよ。」
互いに動きを封じられているものの、口はしっかりと続きをしていた。
「煩い。」
二人に有無を言わさず、アンディはその口論も止める。
「お前達もさっさと仕事へ向かえ。依頼を受けていないなら、俺が一番楽しいのを受けさせるぞ。」
そしてアンディは見物人達にも同じ様に一言。
それだけでギルド内に無駄な騒音は一切なくなり、ギャラリー達はそそくさと出ていった。
「で、今日は何だ。」
アンディは二人を放すと、交互に視線を送って会話を促す。
「…何でもないです。」
だが、そこでジミーは口をつぐんだ。
どうであっても、喧嘩両成敗となるのは目に見えている。
「何でもないなら、朝から走り回るな。それから、お前達に紹介したい奴等がいる。入れ。」
アンディは、ジミーが口をつぐみハルが首を横に振った事で、この件は終わりとばかりに話を変えた。
そして彼の声で促されて奥から現れた人物。
「おはようございます。」
軽く下げた頭から、サラリと銀色の髪が溢れ落ちる。
「おはよう。また会ったわね、ハル。」
にっこりと笑みを浮かべる赤茶色の髪の少女。
「な…。」
さすがのハルも、まさかここまで追いかけてくるとは思っていなかった。
ジミーも内心はハルと同じらしく、名も知らぬ二人に警戒を顕にしている。
「本日付で二人はギルドを移籍して、このハンターギルドBBのメンバーとなった。前ギルドではCランクハンターだ。ジミーとハルは顔見知りらしいから、お前達に今日一日同行してもらい、その腕を確かめる為に先に紹介した。」
淡々と告げるアンディだが、ジミーとハルの表情は固かった。
「どうした。ほら、自己紹介。」
「ジミー・ヘイリーです。」
アンディに促されるまま、条件反射のように自らの名を明かすジミー。
回避策を見出だせないまま、ハルは軽く溜め息をつきなから告げる。
「ハル・クロフォード。」
ハルは既に二人の名前を知っているのだ。
そして恐らく、この二人もハルの事を調べた上でここに来ている。
明らかな策略だった。




