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「…しっかし…、どうするかな?」
そして、漸く少女へ意識を向けるハル。
改めて目にすると、彼女の年齢はハルと変わらなく見え、細身ながらも無駄な肉がついていない。
町娘風の装いに簡素な鎧を身に纏っているところを見ると、同じハンターなのかもしれなかった。
浮遊させた状態からゆっくりと自分の腕の中に下ろし、飛行魔法を解除する。
クタリと己の腕に掛かった感触は本物であり、重さや体温を感じた。
身体を丸めるようにして樽の中に入っていたので分からなかったが、その手足はロープでしっかりと縛られている。
その戒めを自身で解こうとしたのか、ロープで縛された部分は赤く擦れていた。
「女の子になんて酷い事を。…風刃。」
ハルは眉を寄せ、魔力を最小限にした風の刃で少女の戒めを解く。
だがその後、どうしようかとハルが思い悩んでいるうちに、少女の眉が軽く寄せられた。
「…ん…っ…、ジャスティン?」
軽く呻き声をあげ、ゆっくりと瞳が開かれていく。
綺麗な金色の瞳だった。だが続けられた言葉に、ハルは我知らず…本当に僅かながら、心が痛むのを感じた。
「ごめんね、お嬢さん。俺、ジャスティンって名前じゃないの。」
笑顔を浮かべながらも、ハルは自身の心の痛みに戸惑う。
そして少女は見ず知らずの少年に抱き止められている事に混乱したのか、それとも全身黒一色のハルに嫌悪感を感じたのか、その綺麗な顔を歪めた。
「誰よ、あなた。」
明らかな敵意を含んだ声。
それでもハルは嫌な顔一つせず立ち上がり、少女を静かに立たせてやる。
「俺はハル。…ハル・クロフォード。君がそこの樽の中に寝ていたから、出してあげたんだけど…迷惑だった?」
にっこりと笑いかけ、自分に敵意がない事を伝えるハル。
「…そう。迷惑じゃないわ。むしろ助かったかも。ありがと。私はクラウディア。フルネームは言わせないで。」
少女…クラウディアは、素直に感謝とは思えない言葉で礼を告げた。
共に立ち並んだクラウディアはハルより背が低いものの、160センチはあると思われる。顔立ちに現れているように、勝ち気な口調だった。
「ん、分かった。クラウディア、ね。」
ハルはその言葉遣いより、少女の名前を知れた事の喜びが心を占めている事に、自分の事ながら内心驚いている。
勿論、顔には出さないが。
「どうしてあんな中にいたの?」
自身を誤魔化すように、ハルはクラウディアに問い掛けた。
今はセンシュアルが山盛り入っている樽を指して。




