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ガラガラと瓦礫の下から這い出てきたオークは、自分が吹き飛んだ理由が分からないのか左右を見回している。
そして視界にハルを捉えると、牙を剥き出しにして唸った。
敵としては認識されているようである。
「何、自業自得じゃん。魔物ってだけで俺的にアウトなのに、せっかく詰めた袋を壊しちゃダメダメだね。」
「ハル、頭を下げろ!」
オークに向けて文句を言っていたハルだが、突如背後からジミーの言葉が飛んできた。
ハルは考えるでもなく、即座にしゃがみ込む。
その頭上スレスレを矢が抜けた。
グギャアアア!
矢の行方を目で追っていたハルは、それがオークの左目に深々と突き刺さったのを確認する。同時にオークの悲鳴のような叫び声が広くはない建物に響いた。
「危ないですよねっ、ヘイリー姉さん!?」
後ろを振り向いて噛み付くハル。
無意識なのか、頭を撫でている。
「もう少しだったね、ハル。」
「わざとギリギリ狙ったんですかっ?」
「さぁ?どうだったかな。でも、いつまでものんびり話しているアンタが悪いんじゃないの?」
ジミーはハルの苦情に知らん顔をしながらも、次の矢を小さな動きのあった己の背後へ射っていた。
一体のゴブリンが見事射抜かれ、取り囲む側への牽制になる。ジミーが遠距離攻撃タイプなのに、このような局面で生き残っていける理由だった。
「センシュアル、元に戻しておきなさいよ?」
「だ…、あれは俺が…っ。」
「大切な証拠品なんだからね。」
ジミーは次々とゴブリンに矢を放ちながらも、ハルへ威圧的に命令する。
反論しようとしたハルも、言葉の裏に「元はアンタがやったんでしょ?」と聞こえた為にそれ以上口を開けなかった。
「…っ。分かりましたよっ!…風翼。」
不満を目一杯見せながらも、ハルは再び飛行魔法で細かい粉末を宙に集める。
そうして一旦上空に固めていると、片目を射抜かれたオークがハルを攻撃対象として設定したようだった。
己が衝突した衝撃で壊れた壁の欠片を手近にある武器として、石飛礫の如く投げ付けてくる。
しかしながら、防御魔法と強化魔法で守られているハルに、それらの攻撃は全く効果がなかった。
ただ当たって砕けるだけであったが、それでも飛行魔法を操作中のハルは集中が乱される。
「っ…、鬱陶しいな!…風刃。」
綺麗な球体に纏めた空中のセンシュアルが揺らめいた時、ハルはオークに向けて風の刃を放ったのだ。




