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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
小鬼
32/322

32

 ガラガラと瓦礫(がれき)の下から()い出てきたオークは、自分が吹き飛んだ理由が分からないのか左右を見回している。


 そして視界にハルを(とら)えると、牙を剥き出しにして唸った。


 敵としては認識されているようである。


「何、自業自得じゃん。魔物ってだけで俺的にアウトなのに、せっかく詰めた袋を壊しちゃダメダメだね。」


「ハル、頭を下げろ!」


 オークに向けて文句を言っていたハルだが、突如(とつじょ)背後からジミーの言葉が飛んできた。


 ハルは考えるでもなく、即座にしゃがみ込む。


 その頭上スレスレを(クォーラル)が抜けた。


 グギャアアア!


 (クォーラル)の行方を目で追っていたハルは、それがオークの左目に深々と突き刺さったのを確認する。同時にオークの悲鳴のような叫び声が広くはない建物に響いた。


「危ないですよねっ、ヘイリー姉さん!?」


 後ろを振り向いて噛み付くハル。


 無意識なのか、頭を撫でている。


「もう少しだったね、ハル。」


「わざとギリギリ狙ったんですかっ?」


「さぁ?どうだったかな。でも、いつまでものんびり話しているアンタが悪いんじゃないの?」


 ジミーはハルの苦情に知らん顔をしながらも、次の(クォーラル)を小さな動きのあった己の背後へ()っていた。


 一体のゴブリンが見事射抜かれ、取り囲む側への牽制になる。ジミーが遠距離攻撃タイプなのに、このような局面で生き残っていける理由だった。


「センシュアル、元に戻しておきなさいよ?」


「だ…、あれは俺が…っ。」


「大切な証拠品なんだからね。」


 ジミーは次々とゴブリンに(クォーラル)を放ちながらも、ハルへ威圧的に命令する。


 反論しようとしたハルも、言葉の裏に「(もと)はアンタがやったんでしょ?」と聞こえた為にそれ以上口を開けなかった。


「…っ。分かりましたよっ!…風翼(フライ)。」


 不満を目一杯見せながらも、ハルは再び飛行魔法で細かい粉末を(ちゅう)に集める。


 そうして一旦上空に固めていると、片目を射抜かれたオークがハルを攻撃対象として設定したようだった。


 己が衝突した衝撃で壊れた壁の欠片を手近にある武器として、石飛礫(いしつぶて)(ごと)く投げ付けてくる。


 しかしながら、防御魔法と強化魔法で守られているハルに、それらの攻撃は全く効果がなかった。


 ただ当たって砕けるだけであったが、それでも飛行魔法を操作中のハルは集中が乱される。


「っ…、鬱陶(うっとう)しいな!…風刃(ソード)。」


 綺麗な球体に(まと)めた空中のセンシュアルが揺らめいた時、ハルはオークに向けて風の刃を放ったのだ。


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