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「全く、どいつもこいつも子供だな。」
ハルから記録媒体を受け取りつつも、深い溜め息をつくアンディ。
「それは単にマスターが優しいからですよ。なかなかこんな穏やかなギルドはありませんからね。皆さん腕は良いけど、性格に難有りってのが多いです。あ、勿論俺もその中に入るでしょうけど?」
そのままカウンターへ向かうアンディの背についていきながら、ハルは笑顔を崩さない。
彼は余程の事がない限り、笑顔を消さなかった。
「ふん…。今回のヴォジャノーイは1体ではなかったのか。」
カラー読み取り専用機に置いたアンディは、その内容に眉をしかめる。
記憶媒体であるカラーの内容は、各ギルドで厳密なロックがかけられており、ギルドマスターのみ操作可能だ。
「そうですね。ざっと数えて10体はいました。勿論、全部討伐済みです。」
カウンターに肘から先を乗せて体重をかけるハル。
「あぁ。正確には13体だ。全てハルのソロ経験値として加算されている。いかにも、ジェイラス・クロフォードの息子だな。全て魔法での戦闘による勝利と記録されている。」
カラーの記録を読み取りながら、アンディはその肩を竦める。
ハルの父親であるジェイラスもまたハンターであり、アンディと同じくAランクハンターとして時にパーティーを組む事もあったのだ。
そう、3年前までは。
「父も魔法での戦闘が主流でしたからね。それに俺の師匠でもありますから、戦闘方式を今更変えられませんよ。それこそ、身体に染み付いてしまっています。」
笑顔で返すハル。
彼がこの年でCランクハンターである理由はここにあった。
13歳でハンター登録をしたのは父親が他界したからではあるが、物心ついてからの生活を全て父親と共に過ごしていたのである。起きてから寝るまで…否、寝ている時でさえもハンターとしての感覚を鍛えられてきた。
「分かっている。だからこそ、俺はハルをこのギルドに所属する事を認めた。」
アンディはニヤリと笑みを浮かべる。
そう。本来ならば15歳の成人を待ってから登録になるのだ。それをアンディが曲げたのは、既にジェイラスとパーティーを組みながらもハルを見ていた為。
「はい。それはもう、マスターには感謝してますって。マスターが身元保証人になってくれているからこそ、俺のここでの生活があるんですからね。」
「赤ん坊の頃から見てるんだ。そんなものは当たり前って事さ。それに、使えない奴なら始めから入れていない。」
アンディが差し出した拳からペンダントがシャラリと落ちる。
それは青色の光を振り撒きながら回り、やがてハルの目の前で停止した。