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先程まで良い感じで討伐を行っていた二人。だが、今は怒りを顕にするジミーと、不満げなハルの睨み合いが発生していた。
「全く、何て事をしてくれるんだいっ。」
「え~…それ、俺のせいっすか?」
怒鳴るジミーは、足元にばらまかれた白い粉末を前に頭を抱えている。そして不貞腐れているハル。
ゴブリンが運んで集めていたのは、ロイド王国で認められていない幻覚作用のある薬草を原料としたセンシュアルと呼ばれる粉末だった。
強く規制されているにも拘らず、一部の貴族の間で官能を高めるとして取り引きされている。だがこれは依存性が強く、常用は精神破壊をも引き起こすのだ。
「アンタがバカみたいにバカバカ魔法を使うからでしょうがっ。」
ジミーはクロスボウでゴブリンを討伐していたのだが、ハルは風魔法での複数攻撃を行っていたのである。
つまりはその魔法の影響で、紙で包まれていた押収する予定品の大半が粉砕されてしまったのだ。
「俺、そんなにバカバカ言われる事をしました?」
苦笑いを浮かべるハルだが、全く反省の色は見えない。
それを感じ、鋭く睨み付けるジミー。
「あ、じゃあ集めれば良いんですよね?…風翼。」
そして反省するどころか、ハルは簡単にそう告げた。
本来ならば飛行手段として使う魔法を、床に飛び散った無数の白い粉に作用させる。
「な…っ?!」
驚き、目を見開くジミー。
「ん~、何処に纏めようかなぁ…お?あれで良いか。」
それに構う事なくハルは建物内を見回し、見つけた手頃な麻袋へ器用に魔法を操って粉末全てを格納してしまった。
終わった後の床には溢れた痕跡は全くなく、初めからこの麻袋に入っていたかのようである。
「これで良いですよね?」
「…っ。」
にっこりとハルに微笑みかけられ、ジミーはそれ以上何も言い返せなかった。
これ程の効果を及ぼす魔法を、ジミーは一度も見た事がない。
そしてこの魔法の腕が、ハルがこの年齢でCランクハンターである理由だ。
「それじゃ、俺は魔物を回収して帰らせてもらいますね。」
反論がなかったジミーに笑みを向け、ハルは自分が討伐したゴブリンに歩み寄る。
魔物は討伐後、時間を掛けすぎても自壊してしまうのだ。つまりはロスト…獲得アイテムがなくなる。
「…解体。」
一体一体に解体魔法を掛けなくてはならないので、複数討伐の時には後片付けが手間だったりする。
それでも解体魔法を掛けなくてはアイテムを獲得する事は出来ないし、稀に希少価値の高いアイテムもあったりするのだ。
「あ、ダンは集めてくれる?」
大人しく尻をつけて座っていた黒豹に向け、ハルは笑顔でお願いする。
その言葉を聞き、ダンは何も言わず立ち上がるのだった。




