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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
小鬼
23/322

23

■□■


「…なるほどな。」


 煙草の煙を吐きながら、アンディは窓の外を見ている。


 広くはない室内で向かい合って座るアンディとハル。ちなみにダンは、ハルの足元で伏せていた。


 ここはギルド二階のアンディの書斎で、機密保持の為に防音(サウンド・ブース)の魔法が掛けられている。


 ここでハルは朝見た事を話したのだ。


「その黒豹が、か。」


「はい。とりあえず依頼(クエスト)を受けてた訳じゃないんで、俺はそのまま放置しましたけどね。」


 ダンに視線を移したアンディの問いに、ハルは肩を(すく)めてみせる。


「それは正解だ。」


「…何があったか、聞いても良いですか?」


 ()いで向けられたアンディの視線を、ハルは真っ向から受けた。


「ふむ…。これは極秘だ。」


 一呼吸分瞳を閉じたアンディだったが、次に向けられた青い瞳は鋭い。


 貴族がらみだ、とハルは思った。


 事あるごとにギルドへ金と権力をちらつかせてくる貴族は、依頼をしてくる際に守秘義務を要求してくる。そしてその後も自分達が納得しない限り、報酬の支払いすら悪いときていた。


「そ、すか。まぁ、それなら俺は良いですよ。」


「まぁ、待て。」


 聞かなくても良いとばかりに腰を浮かせたハルだったが、それをアンディが引き留める。


「話さないとは言っていない。」


「え~、良いっすよ。貴族がらみなんですよね?」


 嫌そうな顔を見せるハルに、立ち上がる雰囲気を察したダンが()り寄った。


「さすがだな。」


「そんな誉め言葉は要らないですよ。だからヘイリー姉さんに依頼(クエスト)を受けさせたんですよね?」


 表情を変えないアンディだが、ハルはその真意を読み取る。


 ダンの頭を撫でながら、とりあえず一旦浮かせた腰を落とした。


「そうだ。ジミーは元貴族だからな。」


「伯爵家の次男とは、俺も聞いた時に凄く驚きましたけどね。」


 軽く手を振って告げるハル。


 世襲(せしゅう)とはいえ、跡継ぎではない貴族はただ上流家庭の生まれというだけである。自らが爵位を(たまわ)るか、何らかの仕事をしなくてはならないのだ。


「実家が伯爵ともなれば、そこいらの貴族は大抵大人しくなる。」


「けど貴族の悪事を(あば)くってのは、結構キツいっすよね。特に後処理が。」


 アンディは言わなかったが、ハルはあの状況的にそれを察していたのである。


「俺は何も言っていないが。」


「分かりますって。貴族街で…しかも小鬼(ゴブリン)をあれ程の数誘い入れるなんて、地位と権力のあるバカが悪事を働く為以外にないでしょう。」


 呆れつつも告げたハルに、アンディも苦笑を漏らすのだった。


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