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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
小鬼
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■□■


「何だい、ハル。今日は黒猫と散歩かい?」


 ハルと同じハンターギルドに所属しているジミー・ヘイリーが、ギルド奥から声を掛けてきた。


 その言葉にのせられた嫌な感情に、黒猫呼ばわりされたダンが牙を剥き出しにする。


「落ち着け、ダン。こんな分かりやすい挑発に乗るな。…ヘイリー姉さんこそ、今日はいつもより遅いですね。昨夜は彼氏とお楽しみでしたか?」


 ダンにしか聞こえない小声で注意し、返してにっこりと笑みを浮かべてジミーに応じるハル。


 言葉に(とげ)をつけるのを忘れない。ジミーはそれにカッと顔を赤くした。


「なっ…、アンタねぇっ!」


「あ、失礼しました。特定の方はいらっしゃらないんですよね。でも残念ですね。ヘイリー姉さんの想い人であるマスターは既婚者ですし。」


 すぐにハルに余計な干渉をしてくるジミーだが、毎回懲りずに言い負かされている。


「私は女じゃないって言ってるでしょっ!それにブラックバーンさんは…っ。」


「俺がどうかしたのか。」


「っ!」


 狙ったかのようなタイミングで現れたギルドマスターのアンディ・ブラックバーンに、ジミーは息を呑んでしまった。


「どうした、ジミー。ハル、またジミーと口喧嘩か。」


 二の句を紡げずに視線を逸らしたジミーに、アンディは問い掛けをハルに変更する。


 そしてこの二人、一事が万事こうなのだ。既にギルド公認の痴話喧嘩なのである。


「おはようございます、マスター。俺はヘイリー姉さんに朝の挨拶をしていただけですよ。」


「…姉さんじゃない。」


 にっこりと応対するハルに、小さく言い返すジミー。


「全く…。ジミー、あの件は頼んだぞ。ハル、依頼(クエスト)を受けに来た訳ではないなら帰れ。」


 アンディはジミーに何か依頼をしていたらしい。


 確認するようにジミーに告げ、ハルにも淡々と言葉を投げ掛けてきた。


「分かりました、ブラックバーンさん。では、行ってきます。」


 相変わらずすれ違い様にハルに鋭い視線を投げ付けて、ジミーは颯爽とギルドを出ていく。


「…マスター。貴族街の手前、ボロい建物ありますよね?」


 ハルは依頼(クエスト)ボードを見ながら、世間話のように今朝(けさ)見た事を話題にしようとした。


「何を知っている。」


 だが、それを聞いたアンディの反応は固い。


 今ギルド内にはアンディとハル以外に誰もいないのだが、それは何故か。いくら昼に近い時間とはいえ、誰もいないのは珍しいのだ。


「あ~…。もしかして俺、タイミング悪かったですか?」


 ハルはこの雰囲気から察し、苦笑を漏らしながら頬を掻いて見せる。


 そしてダンは、ジミーが出ていった扉をただ睨んでいた。


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