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「…っ?」
背中に違和感を感じて目覚めたハル。
だがすぐにそれが傷の引き攣りである事を思い出す。
「あ~…、全く…。寝起き早々、気分悪いな…。」
ガリガリと頭を掻きながら起き上がるが、俯せ寝をしていた事に今更ながらに気付いた。
「何だか寝た気がしないけど、そろそろ起きないとな。」
伸びをして自身の身体の状態を確認。疲れは完全にとれていないものの、頭痛は治っている。
ハルは既に無意識下で防御魔法を発動しており、これは一種の体調を表すバロメーターでもあった。
「さてと、軽く食事をして出掛けるか。」
いつものように黒い服で身を包んだハルは、ダンを呼ぶべく一階に下りていく。
「おい、ダン。起きてる…か?」
一階のダン専用の部屋を訪れたハルだが、ベッドに丸まったダンを見て言葉が不自然に止まった。
休んでいる筈のダンだが、何故かベッドの上で抱き枕に顔を埋めていたのである。
「…何してんの?」
(ん…、分かんない)
ハルの問いに答えつつも、その顔をあげる事はしなかった。
不審に思ったハルが近付くと、今度はビクッと顔をあげてベッド端へ後ずさる。
「何、その反応。」
(分か…ない…、俺…変)
苛立ちをのせたハルの言葉に、困惑ぎみに頭を振るダン。
「…ふぅん。」
暫く不機嫌そうにダンを見ていたハルは、次の瞬間、ダンに飛び掛かった。
(ギャッ!)
ベッドの端で混乱していたダンは対処が遅れ、飛び掛かってきたハル共々床に落ちる。
そして組み敷かれたのはダンの方で、ハルはその黒豹へ馬乗りになったまま冷たく見下ろした。
腹部に乗られて前脚を押さえ付けられているので身動きが出来ず、尚且混乱していて反応出来ないダン。
「俺はギルドへ行くと言ったろ?分かんない、分かんないって…それじゃ分からんだろ!」
(うぅ…、ごめん…ハル)
苛立ちを顕に、ハルから怒鳴られる。
ダンは固い床に上から押さえ付けられ、見上げる先のハルは怒っているという状況に、徐々に混乱から覚めてきた。
「行くのか行かないのか。ハッキリさせろ。」
尚も強い口調で問い掛けてくるハル。
(…行く…俺、ハルと一緒に行きたい)
ハッキリと言葉にしたダンである。
そこまでして漸くハルはダンの上から退き、溜め息をつきながらも立ち上がった。
「ったく…。行くぞ、ダン。」
(うん、分かった)
ハルに名を呼ばれて、ダンは跳ねるように立ち上がる。
もうそこには先程の混乱はなく、嬉しそうにハルに身体を擦り付ける大型猫科動物がいるだけだった。




