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(ハルがいない…)
気付くと独りになっていたダンは、項垂れてその場に座り込んでしまっていた。
(ハル…あ、痛っ?!)
「煩い。」
耳まで垂れて情けない姿で気落ちしていたダンは、突如として隣に立った気配に悦び叫んで…叩かれた。
ムスッと不機嫌顔のハルは、ダンの隣に立ったまま何も言わずに空を見ている。
(ハル…?)
「…何だ、あれは。」
耳を伏せたまま恐る恐る問い掛けるダンだったが、ハルはそれを特に気にするでもなく前方の建物を視界に納めていた。
それはかなり古い建物ではあったが、未だ人が住んでいる様相は辛うじて保っている。
だがハルは、その中におかしな気配を感じていた。
(うん。分かんない)
キッパリと言い切るダン。
自らの脚でここまで来たというのに、である。
「お前なぁ…。何かを感じたから来たんだろ?」
呆れた拍子に軽く額を押さえながらも、ハルはダンの言葉を引き出そうとしていた。
気付きはダンなのだ。
(うん…。そうだ、変なにおいがした。だから俺、ここまで来た)
漸く言葉になる。
まだ足りないが、気付いて場所を突き止めたという事実があった。
「何か分かるか?」
(う~ん…、魔物?ハルが良く纏わせているにおいと良く似ているし、何だか全身の毛がゾワゾワする)
静かに問い掛けたハルに、ダンは戸惑いつつも言葉を紡ぐ。
ダンはハルや父親と共にハンター生活をしていたのだから、今までに魔物と出会った事がない訳ではない。
だが幼獣であった事もあり、直接相対した経験がなかった。常にハルの結界に守られていたのである。
「うん、正解。凄いね、ダン。」
にっこりと笑顔で誉めるハル。その途端にパァ~ッと花咲ようにダンの雰囲気が明るくなった。
表情は黒豹であるがゆえ乏しいが、感情丸分かりな獣である。
(そう?本当にそう?)
ブンブンと1メートルある太く長い尾を振り回し、ニコニコと表現してもおかしくない感情を表していた。
「聞こえる音的に、小鬼サイズな感じだけどな。その代わり数は多いよ。」
未だ風音の魔法効果を持続させているハルは、その範囲を絞っているもののしっかりと中の音を知覚している。
息遣い、衣擦れの音。
魔物は生物と違い肺等を使った呼吸ではなく、空気中の魔気を直接体内に取り込む。
魔気とは、空気中に漂う魔力の事。それを口や体表から吸収する生命体が魔物だった。




