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「…ん…っ、重…い…。…って、重たいだろっ!」
息苦しさに意識が戻ったハル。
自身の腹の上に乗っていた黒豹の頭を勢い良く叩く。
(んぎゃ…っ。な、何っ??)
寝ているところを叩き起こされた事もあり、黒豹ダンは牙を剥きつつも敵の姿を探した。
「ダン・ウッドマン、おすわりっ。」
ハルの号令に姿勢良くその場に尻をついて座るダン。
(ん?んん?)
頭で理解出来なくとも、号令には身体が反応さえすれば良いのである。
「あのなぁ、ダン。お前は重いの。分かる?いくら俺が防御魔法を発動させているとはいえ、全く周囲と隔絶されている訳じゃないんだ。」
(う、うん…)
「だから俺に乗るなっ!」
(は、はひっ!)
朝から裸でベッドの上で説教。しかも、相手は黒豹だ。
「ったく…朝っぱらから何やってんだ、俺。」
思わず第三者視点で考え、物悲しくなるハルである。
(ごめん…ハル)
項垂れる黒豹ダン。
意思が通じるからか、余計にハルはダンをただの動物と意識しづらかった。
「良いよ、もう。けど、乗るのはやめてくれよ?もうダンは小さくないんだからさ。」
(うん、分かった)
最後に念を押すように告げ、ダンが頷いたのを確認してベッドから降りる。
いつの間にか床下に落ちていたナイトガウンを羽織直し、朝食の準備をすべく部屋を出た。
しかしながらまだ夜明け前。階段の途中で立ち止まり、窓の外を見て溜め息をつく。
「ちょっと早すぎじゃね?」
いくら早めに就寝したからとはいえ、町はまだ起きてはいないのだ。
「なぁ、ダン。散歩いかね…?って何、自分だけ寝てんだよっ!」
そのまま部屋に引き返したハルは、自分を起こした筈のダンが惰眠を貪っている姿を発見。直ぐ様、その上に飛び掛かるようにして起こしに掛かったのである。
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(痛かったよぉ…、苦しかったよぉ…)
グスグズ言いながらも、しっかりとハルについて歩くダン。
基本的にハルと一緒であれば、何でも嬉しいダンだ。
「いつまでも煩い。大体、人を起こしておいてその後寝てるなんて論外だ。」
(うぅ…っ、ハルが怒ってる…っ)
プイッとハルが顔を背けると、普段なら腰の辺りにくる筈のダンの頭が地面スレスレまで下がる。
これがダンの最上級の反省の態度だった。
ハルはそれを、チラリと視線だけ動かして観察する。
しかしながら、ダンは幼すぎるのだ。身体は完全に成体の筈なのに、精神が未熟すぎる。
同じ仲間達と育っていない事も原因なのだろうが、どうも違う要因もありそうだった。




