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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
ダン
16/322

16

■□■


「…ん…っ、重…い…。…って、重たいだろっ!」


 息苦しさに意識が戻ったハル。


 自身の腹の上に乗っていた黒豹の頭を勢い良く(はた)く。


(んぎゃ…っ。な、何っ??)


 寝ているところを叩き起こされた事もあり、黒豹ダンは牙を剥きつつも敵の姿を探した。


「ダン・ウッドマン、おすわりっ。」


 ハルの号令に姿勢良くその場に尻をついて座るダン。


(ん?んん?)


 頭で理解出来なくとも、号令には身体が反応さえすれば良いのである。


「あのなぁ、ダン。お前は重いの。分かる?いくら俺が防御魔法を発動させているとはいえ、全く周囲と隔絶されている訳じゃないんだ。」


(う、うん…)


「だから俺に乗るなっ!」


(は、はひっ!)


 朝から裸でベッドの上で説教。しかも、相手は黒豹だ。


「ったく…朝っぱらから何やってんだ、俺。」


 思わず第三者視点で考え、物悲しくなるハルである。


(ごめん…ハル)


 項垂れる黒豹ダン。


 意思が通じるからか、余計にハルはダンをただの動物と意識しづらかった。


「良いよ、もう。けど、乗るのはやめてくれよ?もうダンは小さくないんだからさ。」


(うん、分かった)


 最後に念を押すように告げ、ダンが頷いたのを確認してベッドから降りる。


 いつの間にか床下に落ちていたナイトガウンを羽織直し、朝食の準備をすべく部屋を出た。


 しかしながらまだ夜明け前。階段の途中で立ち止まり、窓の外を見て溜め息をつく。


「ちょっと早すぎじゃね?」


 いくら早めに就寝したからとはいえ、町はまだ起きてはいないのだ。


「なぁ、ダン。散歩いかね…?って何、自分だけ寝てんだよっ!」


 そのまま部屋に引き返したハルは、自分を起こした筈のダンが惰眠(だみん)(むさぼ)っている姿を発見。直ぐ様、その上に飛び掛かるようにして起こしに掛かったのである。


■□■


(痛かったよぉ…、苦しかったよぉ…)


 グスグズ言いながらも、しっかりとハルについて歩くダン。


 基本的にハルと一緒であれば、何でも嬉しいダンだ。


「いつまでも煩い。大体、人を起こしておいてその後寝てるなんて論外だ。」


(うぅ…っ、ハルが怒ってる…っ)


 プイッとハルが顔を(そむ)けると、普段なら腰の辺りにくる筈のダンの頭が地面スレスレまで下がる。


 これがダンの最上級の反省の態度だった。


 ハルはそれを、チラリと視線だけ動かして観察する。


 しかしながら、ダンは幼すぎるのだ。身体は完全に成体の筈なのに、精神が未熟すぎる。


 同じ仲間達と育っていない事も原因なのだろうが、どうも違う要因もありそうだった。


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