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「…なんて言ったけど、俺に大概の攻撃は効果がないんだよね。」
ハンターギルドを出たハルは、鍛冶屋に向かいつつ独り言を呟く。
常に危険の中に身をおいていたハルは、寝ている時でさえも防御魔法を使用していた。
それは父であるジェイラスと共にハンター業をして自然と身に付いた生き方で、今では無意識のうちに防御魔法を発動させている。
「でもこのままじゃ使いにくいな~。何かに加工しないと…。」
そうこうする間に、ハルの目の前に鍛冶屋の看板が見えた。
鍛冶屋の記録媒体色と同じグリーンの看板が連なって見えるのは、この通りが鍛冶屋通りだからである。
「ロブさん、います?」
その内の一軒の鍛冶屋に入り、ハルは店の奥に声をかけた。
「おぅ、ハルか。今日はどうした。」
店の奥から顔を出したのはこの鍛冶屋の主、ロブ・コンラッド。
茶髪茶眼のロブは身長195センチと大きく、その肌は日に焼けずとも焦げ茶色である。35歳と若いながらも一軒の店を構える彼は、ハルが一番贔屓にしている鍛冶屋だった。
「実は新しいレイピアが欲しいんですよ。この鋭い鉤爪と青銅の塊で作って欲しいんですど…、この夢魔の灰刺を練り込んだり出来ます?」
ハルは店のカウンターに素材を出しながら、笑顔でロブを見上げる。
「ほぅ、エンプーサか…。」
一つ一つを手に持って吟味するロブは、素材で大概の魔物が分かるのだ。
「やった事はないが、試してみよう。三日くれ。」
「お願いします、ロブさん。俺の面倒な依頼に応えてくれるのって、ロブさんくらいなんですから。」
引き受けてくれたロブに対し、ハルは一段とにっこり笑う。
事実どの店も、年若いハルの依頼には良い顔をしてくれなかった。それは今まで行った事のない、無謀な…とも思える提案をしてきたりするからなのだが。
「そうなのか?ハルの意見は冒険が効いていて、逆に興味深いと思うんだがな。しかも、持ってくる素材は状態が良い。これは職人にとって、非常に加工しやすい物なんだ。」
一纏めに籠の中に入れられた素材を見て、ロブは意外そうに応える。
あくまで客観的に捉える事が出来るのも、ロブが若くて思考が柔軟な為だ。
「魔法主体で討伐を行うハンターは少ない。その為、どうしても素材が粗悪になりがちだからな。」
「そう言って貰えると嬉しいですよ。かといって、誉めすぎじゃないっすか?俺、調子に乗っちゃいますよ?」
「おぅ。乗っても良いぞ。」
互いに別ギルドとは言え、その中で若年層に当たるハルとロブである。
二人はこうしてお互いを高めあっていたのだった。




