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「ハルには魅了など必要ないな。」
「何ですか、それ。まるで、俺がタラシみたいな言われ方じゃないですか。」
アンディの言葉に、不本意そうに唇を尖らすハル。
「違うのか?10や20の年の差をものともせず、誰彼構わず女性を虜にしていると巷の噂だぞ。エリン、ハルはやめておけ。いくら男運がないとは言え、コイツは一人のモノにはならんぞ。」
散々な言われようであるハルだったが、エリンの方も然り気無くアンディに貶されている。
ただアンディは貶すつもりは全くなく、事実を告げただけなのだ。それが分かっているから、誰も彼を悪く言えないのである。
「とりあえず俺は、女性を食い物にしてないからね?本当だよ?ただ皆がとても親切で良くしてくれるだけで…。」
「何の見返りもなく、人は人に親切にはしないものだ。」
ハルの自分を擁護する言葉は、誰にも正しく伝わらない。
事実はアンディの言う通りなのだ。
「む~っ。」
拗ねてみせるハルだったが、年上のエリンにはそれすらも魅力的に映る。
ハルは幼い頃に母親をなくしているからか、自分を甘えさせてくれる人物に対する本能的な判断は目敏かった。
「まぁ、俺としてはどのような理由でも構わない。ただ、ギルド内でトラブルを起こさないでくれればそれで良い。」
「ぅわ~、マスター主体の考えだ!でも俺、今まで一度もトラブルを起こしてないもんね~。」
淡々と告げたアンディに対して呆れたような、でもにこやかに訴えるハル。
「それは俺も不思議に思っている。だが、好ましい。」
「へへっ。俺に惚れないでくださいよ~?」
「問題ない。ところでエリン、いつまで固まっているつもりだ。」
ハルの言葉遊びに付き合っていたアンディだが、不意にエリンへ視線を向ける。
「えっ?!…あ、その…。」
エリンはハルの一挙一動を食い入るように見つめていた為、思わぬところでアンディに声をかけられ、慌てふためきワタワタと手を振り回してしまう。
「うきゃ!?」
「はい、危ないからね?」
突然ハルにその手首を掴まれ、エリンは悲鳴に似た声をあげてしまった。
でもそれはエリンが未だに持っていた夢魔の灰刺が原因で、危うくカウンターの上に置いていたハルの手に当たるところだったのである。
「故意ではないにしろ…不注意だぞ、エリン。」
「す、すみません。」
静かにハルの手に夢魔の灰刺を取り上げられ、アンディからは注意をうけてしまった。
エリンは申し訳なさそうに肩を竦め、項垂れつつ謝罪する。
「良いよ、ハートリーさん。これからは気を付けてね?」
それに対し、ハルはにっこりと微笑んで許すのだった。




