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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
隠れ里
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103

 次の瞬間…ブワリと空気が動いた気がして、ハルは目を見張った。


 何故だか、目の前に男はいない。


 代わりにいたのは、黒豹の…ダン。


「ダン…。」


 思わず呟く。


 記憶にある姿と同じく、綺麗な黒い毛皮の美しい黒豹。真っ直ぐ向けられる金色の瞳は…、ハルに先程の男を思い出させた。


「本当に…、ダンだったんだ…。」


(うん。俺、だった)


 お互いの間にある二、三歩の距離が酷く遠く感じたハル。


「…バカダン…、勝手に家出なんかしやがって…っ。」


 ハルは再び(うつむ)き、己の前髪を(つか)む。


 表情を隠すように(おこな)うそれに、黒豹のダンが歩み寄った。


(ごめん、ハル…。ごめんね?)


「バカヤロ…っ。」


 そしてしがみつくように、ハルがダンの身体に抱きつく。


 ダンはその場に尻をつけ、太くて長い尾をハルの身体に巻き付けた。まるで抱き締める腕のように。


 (しばら)くの間、そこはハルとダンだけの空間だった。


 だが、実際には取り囲まれている。


(お願い。ハルを解放して)


 ダンは顔を上げ、老人に真っ直ぐ視線を向けた。


「…お前はどうする。」


 感情の見えない声が返ってくる。


「ここを…、我々を知られたのだ。ハンターに。」


(それは…、そうだけど…。でもっ!)


 言い(つの)るダン。


 話は平行線のままだった。


「…良いよ、ダン。」


 それまでただダンの(ぬく)もりに(ひた)っていたハルが、ゆっくりと身体を起こす。


 グイッと目元を腕で(ぬぐ)った理由は、涙なのか。


「何。俺がハンターだから、このまま生かしては帰さないって?」


 周囲を見回し、ハルは強気に言い放つ。


 その表情に(うれ)いはない。


「そりゃ、魔物は憎い。…この世界から淘汰(とうた)したいくらいに。」


 視線を落とし、吐き捨てるように告げた。


 周囲の殺気が増す。


(は、ハル?!)


「けど…、依頼(クエスト)が出てないからな。」


 驚いてその言葉を止めようとしたダンの頭を優しく撫で、安心させる為か、口元に笑みまで浮かべた。


「…依頼があれば殺しにくるのか。」


 再び感情の見えない声で老人が問い掛けてる。


「そうだね…。そう…、なるかな…。」


 ハルは視線をダンに向けたまま、不安に揺れる金色の瞳を見つめた。


「ならば…。」


誓約(せいやく)、しようか。」


 その言葉を(さえぎ)るように、ハルは真っ直ぐな視線を老人に向ける。


「何?」


「だから、誓約(せいやく)。」


 (いぶか)()に問う老人に、ハルは再び同じ言葉を告げた。


 周囲の気配が戸惑いに変わる。


 ハルの言葉が、ただの口約束ではない事を(さっ)したのだ。


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