101
■□■
翌朝、ハルは朝食後の盆を下げにきたダンに連れられ、初めてトイレとは反対側の廊下を歩く。
既に支えられずとも真っ直ぐ歩けるし、これくらいの闇の中でも視界に問題は全くなかった。
「外、…眩しいかも。」
ダンから、少しだけ緊張が伝わってくる。
それを不思議に思いながらも、ハルは閉ざされた扉を見つめて頷いた。
キイッ…、と扉が開かれる。
溢れんばかりの緑と共に入ってきた光に、ハルは僅かに目を細めたものの、閉じる事はなかった。それより、視界に映ったものが信じられなくて…徐々に瞳が開かれていく。
扉を開けている男…ダンは、ハルに背を向けていた。
だが風に緩やかに靡く髪は腰まで届く程長く、そしてハルと同じく黒。肩まである毛皮のようなフサフサした服も黒く、そこから見える肌は褐色で、身長はハルよりも10センチ程高い。
そして振り向いた瞳は…、綺麗な金色だった。
「ダ…ン?」
この時ハルは初めて男の名を呼んだのだが、その瞬間フワリと細められた瞳に既視感を感じる。
この男を知っている、とハルは頭ではなく、心で感じたのだ。
「うん。」
表情は浮かばないものの、何故だか嬉しそうに見えるのが不思議で。
ハルは己の感覚に違和感を感じ、眉根を寄せる。幻覚でも見せられているのか、と訝しくも思った。
「…ここ、何処だ?…パクストンの森?」
とりあえず、混乱の元である目の前の男は置いておいて、現在地を確認する。
見たところ周囲には木々しかなく、空は抜けるように青かった。
「教えては、ダメなんだって。」
またしても、聞き伝の言葉。
「何で?…俺がハンターだから?」
心臓が妙な動きをしているのを感じながら、ハルはその金色の瞳を真っ直ぐ見つめる。
けれど、その問いに対しての返答はなかった。
代わりに、周囲に突然多くの気配が現れる。
「…どういう、事…?」
今度はダンが動揺していた。
周囲に視線を巡らし、特定の目標を探しているようにも見える。
「何で…、どうして?」
問い掛ける相手を見つけたのか、ダンは拙い質問を繰り返した。
そしてその視線の先から出てきた、ダンと同じような容姿の老人。こちらは白色に少し茶色が混じった髪と、それと同色の毛皮っぽい服を纏っている。
合わせて次から次へと出てくる、髪と同色の服を纏った者達。老若男女いるが、何故か全て成人以上…幼い子供だけがいなかった。




