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「分かる?」
ハルはハンターギルドに来ている。
昨夜の狩り報告と、エンプーサ素材の鑑定の為だ。
「ん~…、ちょっと待ってね?」
受付兼鑑定士のエリン・ハートリーが唸る。
彼女は綺麗な金髪青眼を揺らしながら、分厚い書類から情報を探し出そうとしていた。その度に身長157センチの身体に似合わない大きな胸が動き、自然とハルの視線を縫い付けている。
ところで今彼女が手にしているのは、ハルの昨夜獲得した素材の一つである灰色の刺だ。
「ハル、今回の報酬だ。」
カウンターの後ろからギルドマスターのアンディが現れる。その手にはハルの記録媒体が握られていた。
ギルドマスター以外の誰も、他者のカラーの中身を編集する事は疎か見る事すら出来ないようになっている。勿論、専用の読み取り機を使ってもだ。
「ありがとうございます、マスター。ゴールド貯まったかなぁ?俺、また新しいレイピアが欲しいんですよねっ。」
カラーを受け取りながら、中身を確認するハル。所有者は眺めるだけで欲しい内容を表示させる事が出来る。
「何だ。もう今のレイピアが使い物にならなくなったのか。普段は使っていないのだろう?」
「へへっ。」
不思議そうにアンディに問い掛けられたが、ハルはフワリと笑みを見せるだけだ。
「あ、ありましたっ。」
エリンの声に二人が振り返る。
「あ、すみません。」
「いや、問題ない。あったのか。」
注目を浴びた事により、エリンが首を竦めた。それでもアンディは気にする事なく、エリンの開いている書物に視線を落とす。
「何だったんです、ハートリーさん。」
嬉しそうにカウンターに歩み寄るハル。
「あ、はい。これは夢魔の灰刺というアイテムで、刺した相手を魅了する事が出来ます。」
「魅了?」
エリンの説明に、ハルは僅かに首を傾げた。
「はい。生命あるものなら全て、とありますね。」
「生命…ねぇ。魔物も?」
「魔物は生命あるものではないだろう。」
書物を再度見ながらエリンが問いに答える。だがハルはその答えには満足しなかったようで、新たな問いを発した。
淡々とそれに答えてくれたのはアンディ。確かに魔物は生物ではなく、心臓の代わりに魔核を持っている。
「何だ…、効かないんだ。」
至極残念そうなハルだ。
「あ、でも魔物には麻痺効果があるようですよ?」
「お?それは良いですね。麻痺魔法とかは複雑だから、動きを止める系のアイテムは便利良くて使えそうです。ありがとうございました、ハートリーさん。」
エリンからもたらされた次の回答には満足がいったようで、ハルはにっこりと微笑む。
その笑みをまともに見たエリンは、堪らず頬を染めるのだった。




