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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
夢魔
10/322

10

■□■


「分かる?」


 ハルはハンターギルドに来ている。


 昨夜の狩り報告と、エンプーサ素材の鑑定の為だ。


「ん~…、ちょっと待ってね?」


 受付兼鑑定士のエリン・ハートリーが唸る。


 彼女は綺麗な金髪青眼を揺らしながら、分厚い書類から情報を探し出そうとしていた。その度に身長157センチの身体に似合わない大きな胸が動き、自然とハルの視線を縫い付けている。


 ところで今彼女が手にしているのは、ハルの昨夜獲得した素材の一つである灰色の(とげ)だ。


「ハル、今回の報酬だ。」


 カウンターの後ろからギルドマスターのアンディが現れる。その手にはハルの記録媒体(カラー)が握られていた。


 ギルドマスター以外の誰も、他者のカラーの中身を編集する事は(おろ)か見る事すら出来ないようになっている。勿論、専用の読み取り機を使ってもだ。


「ありがとうございます、マスター。ゴールド貯まったかなぁ?俺、また新しいレイピアが欲しいんですよねっ。」


 カラーを受け取りながら、中身を確認するハル。所有者は眺めるだけで欲しい内容を表示させる事が出来る。


「何だ。もう今のレイピアが使い物にならなくなったのか。普段は使っていないのだろう?」


「へへっ。」


 不思議そうにアンディに問い掛けられたが、ハルはフワリと笑みを見せるだけだ。


「あ、ありましたっ。」


 エリンの声に二人が振り返る。


「あ、すみません。」


「いや、問題ない。あったのか。」


 注目を浴びた事により、エリンが首を(すく)めた。それでもアンディは気にする事なく、エリンの開いている書物に視線を落とす。


「何だったんです、ハートリーさん。」


 嬉しそうにカウンターに歩み寄るハル。


「あ、はい。これは夢魔(むま)灰刺(かいし)というアイテムで、刺した相手を魅了する事が出来ます。」


「魅了?」


 エリンの説明に、ハルは(わず)かに首を傾げた。


「はい。生命(いのち)あるものなら全て、とありますね。」


生命(いのち)…ねぇ。魔物も?」


「魔物は生命(いのち)あるものではないだろう。」


 書物を再度見ながらエリンが問いに答える。だがハルはその答えには満足しなかったようで、新たな問いを発した。


 淡々とそれに答えてくれたのはアンディ。確かに魔物は生物ではなく、心臓の代わりに魔核を持っている。


「何だ…、効かないんだ。」


 至極(しごく)残念そうなハルだ。


「あ、でも魔物には麻痺効果があるようですよ?」


「お?それは良いですね。麻痺魔法とかは複雑だから、動きを止める系のアイテムは便利良くて使えそうです。ありがとうございました、ハートリーさん。」


 エリンからもたらされた次の回答には満足がいったようで、ハルはにっこりと微笑む。


 その笑みをまともに見たエリンは、堪らず頬を染めるのだった。


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