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第一章 『遭遇』 第2話 『与えられた使命』

この話での登場人物

主人公 大園ひかり

友人 北陽水美(ほくようみなみ)横道(よこみち)さくら

謎の少女二人 アテナ、エリィ


前回のダイジェスト

ウラヌス女学園に通学してスポーツ特待生として学年トップになった主人公 大園ひかり、彼女は今日の授業が終わり帰宅しようとしたところで謎の少女が二人現れた。

 時間は変わり昼食時間に戻る

 一階の人通りが少ない廊下をアテナとエリィが昼食を取るために食堂へ二人で歩いていた。

 しかしその先には彼女らがこの道を通るのを既に知っていたかのように修道服を着た背が高く男勝りの顔立ちに茶髪で短髪を散切りにした人物が廊下の壁に背をもたれながら待ち構えていた。


 顔つきとは裏腹に胸とお尻のラインが服の上からでも解るほどしなやかな女性そのもので、修道服を着ているという事はこの学園の関係者であろう事がわかる。

 その人物は少女達の顔を見て表情を変える事もなく言葉を発した


「待っていたよ」


 アテナ達はここで待っていた人物を既に知っていて昼食の時間を邪魔された事を僅かだが不機嫌そうに眉をひそめ語気を荒げるような感じで尋ねる


「会いたいなら校内放送でも直接でも呼び出せばいいじゃない、わざわざこんな所で待ち伏せして言うセリフかしら?」


 立て続けに言葉で攻めてくる少女を受け流すように静かに言葉に対して答えを返す。


「校内放送など目立つやり方は性に合わないのでな」


 その言葉に少し苛立ちを隠せず今朝の出来事を伝える。


「それに私たちは深夜に出動してるんだからまず労いの言葉くらいかけても損はないと思いますけど如何かしら?」


 しかし、相手は表情を変えること無く続ける


「確かに深夜に出動したのは知っている、しかし敵が現れたからにはそれを撃退する任務を課せられている君達が出動するのは必然だ」


 こちらの言葉に対して理屈で言いくるめて沈着冷静に物事を運ぼうとする人物に対しアテナは多少不満を感じながら自分たちの立場を強調する


「確かに私たちはここで戦う使命を与えられているけど、それを義務みたいに押し付けないで」

「上の命令で仕方なくここにきて貴方達の手助けをしているだけ、それはエリィも同じよ。」


 相手は静かに目を閉じて静かに謝意を伝える。


「それについては感謝をしている」

「私の言い方が少しキツイと感じるかもしれないが立場上、常に冷静であろうと心に決めてこのような口調であることを少しでも理解してもらいたい」


「それで?」


 僅かにだが、大人を言い負かした気がしたアテナは本来の目的を尋ね返す。


「小言を伝えるためにワザワザここで待っていたわけじゃないでしょう、何の要件かしら?」


 確信に触れた相手の台詞に対して


「話がそれてしまったな、その原因を作ったのは私自身だが目的は言い争う為に来たのではない」

「本題に入ろう、今回入学した生徒の中に地上側の候補者が見つかった」


 壁に(もた)れていた背を離し二人の前に歩きアテナに写真と幾つかの纏まった資料を手渡しする


「この子が候補者だ」


 その渡された写真に写っていいたのは、ひかりであった。

 どこにでもいるような少女の写真を見てアテナが素直に感想を漏らす。


「名前は大園(おおぞの)ひかりね」

「なんだかあまりぱっとしない子ね、いかにも普通の子って感じがするわ」


 それを聞いた目の前の女性が写真の人物に対し意見を返す。


「見た目は重要な要素ではない、その本人が持つ能力が重要だ」

「もちろん今は普通の中学生になり立ての少女ではある。」


 更に詳細について語り続ける。


「その娘は小さい頃から祖父に剣道を教わり剣術の心得がある、更に身体的能力は今回の運動能力測定でずば抜けていて運動神経、反射神経共にかなり高い」

「現に今回の運動能力テストにおいて君と同率1位の成績を出している」


 しかし、そこで唯一の欠点を言うかの如く言葉を漏らす。


「ただ運動能力が高い反面、学力の方はお世辞にも良いとはいえないが」


 その言葉を聞いて少し苦笑いしながらアテナが聞き返す。


「子供の未来を担う教師がそんな大それた事言っていいのかしらね?」


 イタズラっぽく聞いてきた相手にも表情を変えず冷静に、


「客観的事実を述べたまでだ」

「新しく仲間に加わるかもしれない人物の情報は可能な限り知っておいた方がいいだろう?」


「確かにそうだけど…」

「確かこの学校ってこの都市の中ではトップクラスの進学校なのでしょう?」

「教師に心配されるような学力でよくこの学校に入学できたわね」


 相手の疑問に対し学園での秘密事項のような事柄を語りだす。


「それはちょっとした裏技というかな、この学校にはスポーツ特待生と言う制度があってな学業優秀なだけでは学校は成り立たないから運動能力に秀でている物を推薦入学という形で毎年許可している」


 微妙に納得の行くような話ではあるが、他所の世界の事情などあまり意味は無いと思い、先ほどの会話で気になった言葉について問いかける。


「この子の能力を買っているように聞こえるのに少しだけ引っかかる言葉があったのよね」


「私の説明に何かおかしな点があったか?」


「先程の言葉、加わるかもしれないと言ったでしょう?」

「それはどういう事かしら既に新たな仲間として参加決定と思っていたけれど」


 その言葉を聞いて相手が僅かな笑みを漏らす。


「流石だなそこに気づいたか、確かにこの子の参加を認めた訳ではなく現時点ではあくまで候補者だ」


 試されるような言い回しに少し面倒くさいような表情で

 

「人の洞察力を試すような回りくどい言い方はやめてちょうだい。」

「ほとんど決定みたいな言い方しておいて、まだ何か問題点があるの?」


「そうではない、私は君たちの管理者だが現場で戦うメンバーは他でもないアテナとエリィだ」

「二人の同意なくして参加を認めるわけには行かないだろう」


 妙に納得の行く説明につい頷きそうになるがそれを誤魔化すように


「まあ、エリィは何も言わずに頷きそうだけどね。」


 隣に立っているエリィの姿をちらりと見るとその目がこちらに向いている。

 まるでその通りだと瞳が告げているようだった。


「私にはお前たちのような戦闘能力は無い」

「そこで実際にこの娘の資料を渡した上で能力を判断して欲しいという事だ」


 アテナは目を閉じておでこに手をあてて少しだけ考えこむような仕草を見せる。

 だがすぐに答えが決まったのか相手の要望に対して要求を出した。

 

「それじゃあ、一つ条件を出していいかしら?」

「私がこの子を試験して参加するに相応しい能力を持っているか見極めさせて貰う、それが条件よ」


 相手は理にかなった返答に納得したようだ。


「解ったその条件を飲もう、新たな戦士として仲間に加わるに相応しい能力を持っているか試験を行った結果で決める事に異論を挟む余地はない。」


 テストするには場所が必要だ。

 それにうってつけの場所があるのをアテナは知っているのでそれを確認するために問いかける


「試験会場に地下施設を使用していいかしら?」


 その言葉に直ぐに答えが返ってくる。


「了承した、但しあまり地下で派手にやって学校に衝撃が響かないように注意を払ってな」

 

「帰宅時の夕方で人が少なくなる時間帯に呼び出して試験するわ、学園長代理の呼び出しにするけど問題ないかしら?」


「問題ない、では結果は試験が終わった夕刻に学園長室で聞こう」


 話が終わり戻ろうとした相手にアテナはふとした疑問が頭をよぎり素直にその疑問をぶつけてみる


「もしテストに不合格だった場合はどうするのかしら?」


 相手はこちらへ振り返り状況を冷静に分析するかのように疑問に対して答える


「不合格だったら新たな候補者を探すまでだが、この娘のような逸材は滅多にみつからないのでそうならない事を祈ろう」


 そこで何かに気づいたように追加で助言をしてくる


「ああ、それと運動能力が高いと行っても相手は中学生になりたての娘だからやりすぎて相手を怪我させないようにしてくれ、なんといっても普通の人間なのだから」


 悪態をつくような感じでボソッと言葉を漏らす。


「私達も同じ年齢なんですけどね」


 その言葉を聞き少しだけ笑みを漏らしながら含みがあるような言い方で


「戦闘のエリート二人と普通の人間の戦いだから心配にもなるさ」


 アテナは最後にビシっと言い返す。


「そんなヘマはしないわよ」


 時間は戻り先ほどの呼び止められた玄関前

 ひかりは二人の視線が明らかに自分に向いており、自身を指さしその少女たちに娘は尋ねてみた。


「え…っと、ボクの事呼びました?」


 目の前にいる金髪の美少女は問われた内容に首を縦に振りその通りだと肯定した。


「ええ、あなたの事を呼びましたわ。」


 目の前にいる少女はひかり以外の二人を軽く横目で見て更に自分の目的を相手に告げる。


「大薗ひかりさん、友人たちと帰宅の時間でしょうけども学園長代理からお呼び出しが掛かっているので一緒に付いてきて頂いてよろしいかしら?」


 娘は驚きの表情が隠せなかった。

 何故ならこの少女と直接言葉を交わすのは初めてなのに既に自分の名前を知っていた。


「とりあえず立ち話も何だから一緒に来てもらえるかしら? それと呼び出しは一人で来るように告げられてるのでお友達には一緒に来るのをご遠慮いただくわ」


「みーちゃん、さっちゃんどうも呼ばれてるみたいだから先に帰ってて」


 二人は顔を合わせてひかりに答える


「解りました、先に二人で帰ってますね」

「うん、わかったよ。学校の偉い人に呼び出せされたならしょーがないよね」


 納得したような形で玄関で身支度を済ませた二人が先に帰宅を始める。


「じゃあ、また明日ね」

「ばーい、まったねー」


 手を降ってひかりは友人を見送る


「うん、また明日ー」

 

 友人が帰宅するのを見送ったのを確認して金髪の少女がこれから行く場所へ案内するかのように


「それじゃあ行きましょうか」


 そういえばひかりは学園長室がどこにあるのか知らない、このまま目の前の二人についていくしか無いので後ろに並んで廊下を歩いて行く。

 長い廊下を歩きながら不意に金髪の娘が話しかけてきた。


「フルネームで呼ぶのは、面倒だからひかりさんでいいかしら?」

「まだ名前を呼び捨てにする程親しい間柄でもないし、これからそうなるかも解らないですしね」


 この少女は丁重な言葉使いでどこか良家のお嬢様みたいな風格を感じさせるが相反して少しだけキツイ感じを醸し出している。


「そういえば、あなたの名前を読んでこちらの名前を伝えてなかったですわね」


「私の名前はアテナ、そして私の後ろにいる子がエリィよ」


 少女の後ろに付いていた娘が今の言葉を聞いてこちらを少しだけ見て僅かに頷いた。

 二人の少女は朝に見た時よりすごく近くにいるため、その容姿が見て取れる。


 アテナと名乗った少女は、北欧系の外国人のような整った顔立ちをしていた。

 スラリとした鼻筋に少し釣り目できつそうな感じ。

 肌は白人に近いが少し黄色がかってアジアンに近い。

 前髪は真ん中分けのストレート、後ろ髪はソバージュがかかったようなウェーブで腰まである。

 体のラインはとても発育がよく少し大きめの胸と腰回りが中学生とは思えないほど大人びていた。


 対照的にエリィは透き通るような白い肌と幼さが残ったあどけない顔。

 ちょっと眠いような感じの半開きの目に全体が覆われるような少し太めの黒いフレームの眼鏡

 帽子に覆われていて、はっきりとは解り難いが肩より上までのセミロングの青みがかった髪。

 前髪は(まば)らに切られているが長さは均等に綺麗に切り揃えてある。

 修道服に隠れているが体つきはまだ幼く胸も腰回りもアテナと比べると子供っぽい体型をしている。

 そういえば、この子は現れた時から全くの無口で一言も喋っていなかった。

 無口な少女なのだろうか?そういう疑問が頭に浮かんだ。


 廊下を歩きながら下へ降りる階段の場所に来た所でそのまま下にへと階段を降りていく。

 二人の後に続く形でひかりも一緒に付いて行く。


 階段を降りると大きな扉がありアテナは既に何度もここに来ているかのように横にあるボックスを開けてポケットの中から取り出した鍵を箱の中にある鍵穴へと差し込む。

 鍵を右に捻ると扉が自動で開き中にエレベータが現れ少女が下に降りるボタンを押す。


 一分ほど下に降りただろうかエレベーターの扉が開き広間に出る。

 到着した場所はかなり広い場所で左右の奥行きは学校のグラウンドぐらいの広さがあり天井は学校の体育館より高く約二十メートルはある。

 床も周りも岩盤に覆われているがトンネルの削岩機で真っ直ぐに掘られたような綺麗な形に整えられこの空間がまるで人工的に作られた地下洞窟という感じであった。


 ひかりは連れて来られた場所に疑問がわき目の前の少女に問いただす。


「ここは、どうみても学園長室ではないですよね?」


 アテナは冷静に言葉を返す。


「ここは地下施設、避難場所にも使えるし隠れた練習にも使える広場、ただし一部の人達しか入場を許されていない特別な場所よ」


 静かに答える少女に対して、感情を少し高ぶらせながら再度娘が問う。


「学園長からの呼び出しじゃなかったんですか!? 何でボクこんな場所に連れて来られているんですか?」


「学園長代理からの呼び出しは名目上の呼び出し理由よ、呼び出すことに関しては副学長に既に許可を取っています」

「嘘だと思うなら後で訪ねてみるといいわ」


 正当な理由の呼び出しである事を告げられ観念したのか高ぶった感情を少しずつ抑えながらつぶやく。


「一体ここで何をするんですか…?」


 アテナがひかりの方へスッと振り返り真っ直ぐと腕を上げ指差す。

そして目を真っ直ぐに見ながらこう告げる


「あなたは私とここで戦ってもらいます。」


 学園長などの呼び出しではない、アテナは本来の目的をひかりに告げた。

やっと本編始動ですがバトルはまだです。

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