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第一章 『遭遇』 第1話 『二人の少女」

この話での登場人物

主人公 大園(おおぞの) ひかり

父 大園 光一(こういち)

母 大園 あずさ

妹 大園 ひなた

友人 北陽(ほくよう) 水美(みなみ)横道(よこみち) さくら

教師 岩屋(いわや) まなみ

謎の少女二人

  明け方の薄暗い空を僅かに登りはじめ朝日が閑静な住宅街を照らす頃、とある一軒家で朝の目覚めを知らせるように周囲に甲高い目覚まし時計の電子音が一帯に鳴り響き喧騒にする。


 睡眠を妨害する騒音の元に反応して布団の中に潜っている人物が右手を出しそれを阻止しようとして見えない状態から手探りで宙をさまよわせるが中々見つけられない。

 ようやく手がたどり着くと消音のスイッチを押してもう一度布団に潜り込み眠り続ける。


 先ほどの起床を知らせる音を聞いた母親が階段を登りある部屋の前で止まってそのまま扉をノックして開きながら優しく部屋に寝ている人物へ呼びかける。

 

「ひかりー? もう朝よ、そろそろ起きなさい」


 母の声を聞いてベッドの上で勢い良く被っていた布団を持ちあげた。

 肩より長い茶髪を靡かせてながらまだ少しだけ幼さが残るボーイッシュな顔立ちの少女。

 半分寝ぼけた眼で上半身起き上がらせて姿を見せた娘に母親が優しく朝の挨拶を交す。


「おはよう、ひかり」


 眠い目をぱちくりさせながら辺りを見回し少し目が覚めた様子で元気に返事を返す。


「おはよう!ママ!」


 この元気一杯の少女の名は大園(おおぞの)ひかり、今年中学校に進学した本作の主人公である。


「着替えてすぐ降りてきなさいね」


 先程の寝ぼけた様子から打って変わって勢い良くベッドから飛び降りながら元気な声で返事をする。


「うん、わかったー!すぐいくー」


 母はその言葉を聞いて安心したのか次の目的があるかのようにそのまま隣の部屋へ向かう。

 隣には妹が寝ていてるので起こしに行くのだろう。


 少女は妹を起こしている閉められていたカーテンを勢い良く両手で開いて景色を確認すると外は快晴でその日差しを全身で浴びながら一日の始まりを告げるような言葉を口に出す。

 

「んー、今日もいい天気!」


 少女は鏡の前でブラシ使い寝ぐせだらけの髪を直し、机の横にある小物入れから髪を纏めるシュシュを取り出して自身のトレードマークであるポニーテルを作り上げる。

 そのままパジャマを脱ぎ学校の制服に着替えてから部屋を出てリビングへと向かう。


「はわぁー、おねいちゃん、おあよう」

 

 途中の廊下で大きなあくびをしながら眠そうな顔で歩いてきたのは小学五年生になる妹のひなた。

 姉妹だけあって容姿もよく似て髪型や顔もひかりの小さいころにそっくりである。


「おはよっ! ひなた、一緒に下に行こっ」


 姉である少女は眠そうな妹を連れ様子を見て手を取り下の階へと連れて行く。

 揃ってリビングへ向かうと銀縁眼鏡を掛け整えた髪型をした父親が先に椅子に座って部屋に入ってきた二人に対して朝の挨拶を交わしてくる。


「おはよう、ひかり、ひなた」


 この人物は父である大園光一(おおぞのこういち)

 大型機械をコンピューターで設計する企業に務めるサラリーマンで眼鏡を掛けていつも小難しい顔をしているが見た目とは裏腹に家族も周囲にも優しいと評判だ。

 姉妹らしくぴったりとした息が揃った状態で目の前の父親に元気な挨拶を返す。


「おはよう、パパ」


 その姿を見た父は少しにこやかな笑顔をみせながらテーブルに付く母を待つ。

 しばらくして用意が出来た家族が全員テーブルに座り二人の娘に温かいご飯を装い終える。


「いただきます」

「いただきまーす」


 父と姉妹が食事を始める挨拶と共に朝食に手を付ける。


「めしあがれ」


 先ほど二人を起こしに来たこの母の名前は、大園あずさ。

 主婦をやりながら、フラワーショップあずさを経営し、時折フラワーアレンジメントの先生をやりながら家庭の事も抜かりなく切り盛りしてる凄い母親だ。

 食卓の団欒の中で父が最近の娘の動向が気になったのか学校の近況を訪ねてきた。


「新しい学校の様子はどうだい?」


 娘である少女は突然の質問に少しあさっての方向を見て若干考えながら答える。


「うーん、まだ入ったばかりだからよく解らないけど…」


 語尾に含みがあるのを母が気になり、同じ言葉で質問返ししてきた。


「…けど?」


「やっぱり、勉強が難しいよ~」


 少し間をおいて微妙な泣き言を元気に返す娘に対して、母が少し苦笑いて冗談っぽく学業優秀な友人の名前を出して言う。


「それじゃあ、みーちゃんに家庭教師でもお願いしないといけないかしらね」


 その言葉を聞いた娘は少しだけ難しい顔を見せながら友人が置かれてる立場を母に告げる。


「みーちゃんなら教えてくれそうだけど、毎日お稽古事か大変だからね~」


 両方の手のひらを肩まで上げてお手上げ状態のような素振りを見せる娘だがそれを見た父が優しく諭す。


「そうか、でも困ったことがあったら直ぐに言うんだぞ」


 娘は優しい言葉にウンウンと頭を下げて意思表示する。

 朝の一家団欒が終わり食事を終えて父が仕事に出勤するため玄関に向かう。

 

「それじゃあ、行ってくるよ」 


 一足先に会社へと向かう父を二人の娘が見送る。


「いってらっしゃーい」


 姉妹の食事も終わり歯を磨いて時計を見るといい時間を示しているのを見てあわてて玄関に向かう。


「私たちもいってきまーす!」


 見送る母に元気一杯に出発の挨拶を伝え玄関から外に走りだすと娘たちを案じるかのように言葉を掛けてくる。。


「車に気を付けてねー」


 ひかりは妹とは逆方向なので玄関で別れその場で手を振って自分の通学路に向かっていく。 

 少女が向かう先は長い階段を登って少し山の方に登った場所にある聖ウラヌス女学園。

 ここは小等部から大学まで一貫した教育が受けれる学問の名門校。

 遠い場所からもここに通ってくる人用に寮まで完備した別名お嬢様学校と呼ばれている。


 娘が学校に向かって歩いてしばらく行くと校舎に向かう階段前にある第二校門に到着する。

 そこには大きな目に黒縁メガネと長くて綺麗な黒髪を靡かせてちょっと小柄な少女が立っていた。

  こちらを見ながらよく聞きなれたかわいらしい声で朝の挨拶を交わしてくる。


「ひかりちゃん、おはよう」


 その見慣れた姿を見て少女も手を大きく振りながら元気に返事をする。


「みーちゃんおっはよー」


 ひかりに声を掛けてきたのは自身の小学校時代からの大親友で何時も一緒に通学している北陽水美(ほくようみなみ)である。


「今日も、ひかりちゃんは元気ね」


 彼女は話し方や仕草がすごく上品で実はいいところのお嬢様。

 笑顔がとても可愛くて将来美人になる事間違いない有望株だとひかりは常々思っている。

 娘は隣に並んで歩き出す友人にじっと見つめられながら軽く自分をアピールするかのように元気であることを伝える。


「元気だけがとりえだけだからね!」


 どうだと言わんばかりの表情をしながら胸を張って相手に見せつけると元気な姿を見て相手はとびきりの笑顔で微笑む。


 聖ウラヌス女学園は市街地より少し離れた山の中、自然に恵まれたとても景観の良い学校である。

 通り道には長い階段を登ってしばらく進んだ奥地にある校舎まで向かう必要がある。


「毎日通るけどこの階段…キツイよね…」


 息も切らさず平気に登り切る元気一杯の少女は余裕の表情を見せながら答える。


「そう?ボクは全然ヘーキだけど?」


「ひかりちゃんは運動能力抜群だからね、私なんて習い事ばかりで運動してる時間がないもの…」


 そう、彼女は学業以外にも家で沢山の習い事を毎日こなしている。

 彼女の家庭は裕福なので学校前まで車で送迎するのも可能なはずだがそれを拒否ししている。

 答えはすごくシンプルでひかりの心にも刻まれている。


 (二人で一緒に通学したいから)


 その一言が彼女の気持ちを全て表していた。

 仲が良い友人と一緒に学校に行きたい、シンプルだけど心に響く言葉でそれ以上は追求しなかった。

 二人で通学路を歩きながら彼女が問いかけてきた。


「もうちょっとしたら学力テストがあるけどひかりちゃん勉強は進んでる?」

 

 問われた娘は自分の苦手な事項を聞かれてしまったと言うような表情をしながら乾いた笑いで誤魔化すように自分の気持ちを伝える。


「あはははは、テストね…正直全然…」


 自信が無さそうな友人に対して少女は少し真剣な面持ちで相手のことを気遣いひとつの提案をする。


「いつか二人で勉強会しましょうね」


 その言葉を聞き、娘は首を縦に振って意思表示を表し、突然お辞儀をしながら彼女にお願いをする。


「みなみ先生よろしくお願いします」


 頼られた友人はふふっと笑い、任せなさいとでも言うように胸を張って答えた。


 最後の階段を登りきった所で教会と学校の校舎が融合したような白い建物が現れる。

 ここが聖ウラヌス女学園であり、その場所はこの地域の中では最大の敷地を持ちとても膨大だ。

 二人は第一校門を通り抜け学内に入り教室まで向かうが途中にある校内掲示板の前で何かの人だかりが出来ていた。


 気になった少女は素直な声で隣の娘を見て問いかける


「なんだろ、あれ?」


 疑問に思った二人は顔を合わせて原因になっている場所を覗きこもうと揃って向かう。

 すると少女達の中に特徴的な紺色の髪と赤色のリボンで結んだツインテールの見知った女の子が目の前にいた。

 ひかりがいつもの呼び方で彼女に声をかける。


「さっちゃん、おはよう。」


 聞き慣れた呼び声を聞いた少女はくるっと振り返り挨拶をしてきた人物と隣にいる友人を見つけて元気よく挨拶を返してきた。


「ひーちゃん、みなちゃん。おはよう!」

 

 この少女は小学校時代からの共通の友人で同じく聖ウラヌス女学園に入学した横道(よこみち)さくらである。

 ひかりに負けず劣らずの元気一杯でとてもノリが良い少女。他人への接し方はとてもフランクで誰にでも気兼ねなく喋れる少女は昔から誰にでも好かれとても人気者だった。


「それよりコレ見てみて!」


 二人の少女は人だかりの中にあった掲示板に貼られた紙を見ると先日実施された全校生徒対象の運動能力測定上位者と書かれた紙が貼られていた。

 左から学年順に貼られており一年生の欄を下から順番に眺めていくと5位にさくらがいた。


「さっちゃん五位に入ってるよ!」


 それを聴いたさくらが少しだけ不満そうに片頬を膨らましながら娘に反論する。


「ぶー、もっと上をみてみなさいよ」


 彼女の言葉に促されそのまま上を見ていくと一位入賞者によく見た名前が並んでいた。

 学園最優秀者『大園ひかり』


 それに気付いた隣の友人が驚きの声をあげて喜んだ。


「ひかりちゃん凄い!一位だよ!!」


 驚きと歓声から少しだけ注目の的になるがそれよりも自身が一番だと言う事に素直に驚く。


「うわっホントだ!」


 素直に喜ぶ親友とは対照的に目の前の少女はいつも言い慣れているようなセリフをひかりへと投げつける。

 

「これだから体力馬鹿は…」


 運動しかとりえがない友人にやれやれといった表情と素振りを見せてくる少女に対して少し大きめな声で反論する。


「体力馬鹿っていうなーーー!」


 彼女のそれは別に嫌味ではなく、自分が運動で負けた時に賞賛とも取れる褒め言葉でもある事を知っていた。

 このやりとりはもはや定番とした行為でもある。

 少女たちが皆で喜びながら騒いでいると、ひかりと同率二位に英語の名前が並んでいた。

 疑問に思った娘がその名前が読めなくて隣にいる友人に聞いてみた。


「この人なんて名前だろ…」


 名前を問われた学業優秀な友人が書かれている英語をスラスラと読み上げる。


「アテナ・フォースさん・メルシオーネさん?かな下は間違ってるかもしれないけど…」


 友人の言葉を聞き目の前の少女は書かれている内容について気になった発言をする。


「点数見ると殆ど同率一位だけど、何故か二位になってるね」


 疑問を投げかけて来たタイミングで鐘の音に似た予鈴が構内設置されたスピーカーから鳴り響く。

 掲示板前に(たむろ)していた少女たちはみんな教室へと向かい始める。


「私達も教室に行こ?」


 優等生である友人の言葉に同調した少女たちは揃って教室へと向かい始める。

 だがその時に普通の女の子に混じって別の方角から異彩を放った金髪の少女と修道服の娘二人が遠くを歩いて教室に向かう姿が目についた。


 校門とは別方向から来たので恐らく学生寮からの通学者なのであろう、遠くから人だかりも気にせずに校舎に進んでいく。

 その姿を尻目にひかりたちは教室へと向かい、自分たちの席へと付く。

 しばらくすると先生が扉を開いて中に入って立っている生徒に席に着席するように促す。


「はい、朝礼とホームルームを始めますよ、みんな席について。」


 教室に入ってきたのは、1-5担任の岩屋まなみ先生。

 髪を頭の後ろでお団子にまとめ20台後半の眼鏡を掛けた落ち着きある女性で女生徒の信頼も厚い。

 全員が着席したのを見届け日直がこの学校で行われている朝の挨拶を始める。


「我らを見守る大いなる母よ全ての魂と全ての命を慈しみ、今日という日々を感謝します。

「慈愛深き女神様に一礼。」


 聖ウラヌス女学園は、一般的なカトリックのようなキリスト教信仰ではなく独自の女神様を奉っている。

 そのため朝の挨拶も他の宗教とは変わっていて朝は祈りから始まる。


「そういえば、今日は運動能力測定結果が張り出されてたけど、実はこのクラスでトップになった人がいました!」


 クラスの中が僅かにざわめき誰かという感じで皆が周りを見回す。

 先生がその人物が誰か大声で発表をした。


「それは大園ひかりさんです。」


 その言葉とともにひかりに周りからの注目の視線が集まる。

 多数の注目を浴びた少女はちょっと恥ずかしそうに頭を掻いて照れ隠しをする。

 だが そこで先生の容赦無いツッコミが入る。


「勉強も同じくらい頑張ってくれることを期待するわね」


 ひかりはその言葉を聞きズッコケた、容赦無い言葉に周りの生徒達が小さく笑う。

 少し恥ずかしそうにする娘に親友である少女は小声でやさしく声を掛けてきた。


「でも、一番になることって凄いことですよ」


 笑顔で喜ぶ友人にとても助けられた感じがした、彼女と友達で良かったと心底思った。


 ホームルームが終わり一日の授業が始まる。

 一日の日課である勉強が始まり、眠くなるような難しい授業を隣の友人に見守られながら午前中が終わる。

 友人達と仲良く三人で学食へと向かい昨日の出来事や他愛もない話を食事が終わる。

 お腹いっぱいの状態で眠気と格闘しながら午後からの授業が全て終わる

 三人は帰宅しようと揃って学校の玄関に向かった所で不意に誰かから声を掛けられる。


「ちょっといいかしら?」


 下履きを用意して帰ろうとしていたところで不意に呼びかけられた方向へ目を向けて声の主を確認すると朝に見かけた金髪の美少女と修道服を着た娘が立っていった。

まだ導入部でストーリーが本編に進んでいません

次から本編が始ります。

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