醒める夢
「パパ」
マロは初めて見る父の姿に感動していた。それは理性から来るものではない。無意識に自分の体を流れる血液の躍動が、彼を喚起させていたのだ。それはガロも同じだった。マロと別れたのは、まだ彼が赤ん坊の頃で、まともに会話などしたことが無かったというのに、二人の間には万の言葉を尽くしても説明できないであろう、不思議な絆のようなものがあった。
「マロか、成長したな・・・・」
「パパ、今ここを脱出するからね」
マロはアブソリュートに眼で合図をした。
「ああ、分かったマロ」
ガロはアブソリュートを不審そうに見ていた。あの黒い無機質な神獣は何者なのだろうと、純粋な疑問を抱いていた。
アブソリュートは何も無い空間を殴り付けると、空間にひびが入り、黒い空間が出現していた。
「今、この世界を0に戻した。直に現実に戻るであろう」
果たしてアブソリュートの言葉道理に事は運んだ。二人の体は黒い空間に吸い込まれ、いつの間にか城の地下室に座っていた。
「無事か?」
フェンリルは眠っているマロの顔と、ガロの顔を交互に舐めた。すると二人同時に飛び上がるように起きると、手で濡れた頬を触った。
「汚いだろフェンリル」
「ふん、動作まで親子そっくりだな」
フェンリルはそのままテクテクと四足歩行で歩くと、地下室から出て行った。
「終わったのかな?」
「呆気無くて、イマイチ実感が持てないが、俺にはまだ仕事があるんでな。マロは転生の塔に向かってくれ」
「パパはどうするの?」
「暗黒神獣の残党を狩ってくる。奴らは頭を失って暴徒化するやも知れないからな」
あまりにも短い親子での会話だった。ガロはマロと別れると、フェンリルの背に乗って、宣言通りに、暗黒神獣を探しに飛び立った。空は元の青空に戻り、鳥が飛んでいた。あの時、マロはフェンリルの魔力で蘇った。シヴァを失い、悲しみに暮れる彼を、傍らにいるアブソリュートが励ました。
「行こう、皆が待っている」
マロは静かに歩き始めた。そして塔の中で倒れていたソルガやジャック、そしてアリッサにイフリート、最後にファムを発見した。
「マロよ・・・・」
「どうしたのファム?」
「いや・・・・」
ファムも内心闘っていた。
(今日こそ言うぞ。世界が平和になったのだ。私のフィアンセはマロ以外には考えられない)
「わ、私と一緒に暮らさないか?」
ファムは顔を真っ赤に紅潮させながら叫んだ。声が大きいので、ソルガやアリッサにも聞こえており、イフリートはやれやれと首を横に振っていた。マロは瞳をキラキラと輝かせると、大きく頷いた。
「うん、暮らそう」
「え、やった・・・・」
喜ぶファムを尻目にマロは、ソルガとアリッサの方を振り返った。
「じゃあさ、ソルガとアリッサも一緒に暮らそうよ。皆で仲良くね。イフリートも来るかい?」
「くっ・・・・」
イフリートは思わず失笑していた。残りの二人も作り笑顔で、この話が喜ぶファムの耳に入っていないことを喜ぶのであった。
暗黒神獣編 完結




