表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/121

悪夢の世界へ

 ワイズマンを倒したアリッサとイフリートの二人は、元の姿に戻った転生の塔の螺旋階段を上っていた。しばらく無言のまま進んでいると、階段にもたれ掛かるように倒れているジャックを発見した。

「あんた、大丈夫?」

 アリッサはジャックに駆け寄ると、彼に肩を貸した。彼は苦しそうに全身から汗を流していた。  「ああ、ありがとよ。さっき闘ってたんだが、相手が強かったど・・・・」

「怪我人がいては邪魔だ。アリッサとやら、そいつは見捨てろ」

 イフリートは冷たく言い放つと、流石のアリッサも我慢ならなかったのか、イフリートの顔を強く睨み付けた。

「そんな言い方酷いわ」


 アリッサの言葉に、今度はジャックが宥めるように口火を切った。

「大丈夫だ。本当のことだど。オラは置いて行ってくれて構わねえ」

「そうですね」

 階段の上の方から、聞き覚えのある声がした。ソルガが下って来たのだ。そして傷だらけの身体を引き摺りながら言った。

「私もこの通り、負傷してしまいました。ジャックさんと私は下の方で休んでいます。だから、お二人は上の階へ行ってください。傷が治ったら、すぐに合流しますから」

「人間のくせに良い判断力だ」

 イフリートはそのまま階段を上って行った。その痕をアリッサが急いで付いて行った。後ろを見ると、ソルガがジャックに肩を貸しながら、下の階に降りて行くのが見えて、少しだけ安心した。


「気を付けろ。あの小部屋に何かいるぞ」

 イフリートは階段を駆け上がると、円形の小部屋から感じられる怪しげな気配を察知していた。そこにいたのは、金髪の長い髪をした、中年の男、ゲブが椅子に座り、読書に勤しんでいた。あまりに隙だらけだったので、却ってこちらの方が戸惑ってしまった。

「ようやく来ましたか」

 ゲブは立ち上がると本をテーブルに置いて、イフリートとアリッサの元へ歩いて来た。

「あんた、てっきり最上階にいるものだと・・・・」

「最初はいましたが、あまりに退屈でね。それにせっかくのプリズンタワーも元に戻ってしまいましたし、はっきり言って興を削がれました。もう終わらせましょうかね」


 ゲブは一通り喋り終えると、全身から黒い霧のような魔力を放出した。そして彼の背後から、白い体をした人型の神獣、アーリマンが姿を現した。

 アーリマンは一つ目に、背中には白い翼が生えており、その他にも、腕や足、胸元にも目玉が付いていた。それらを何度かパチクリ開閉させると、突然、全ての眼が大きく見開かれた。

「な、何・・・・?」

 気付いた時には既に遅かった。アーリマンの攻撃は始まっていたのだ。全身の目玉から光線が放たれると、アリッサとイフリートの胸を貫いた。そして二人は、魂を抜かれたように、瞳を開けたまま背後に倒れ、そのまま天井を見つめたまま動かなくなった。


「ふふふ、悪夢の世界へ行ってらっしゃい」

 ゲブは静かに笑うと、再び椅子に座り、読書に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ