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怒りのアスラ

 張りつめた空気が流れていた。ファムは剣を杖にして立ち上がると、周囲を見渡した。

 白い霧が立ち込めているせいで、遠くまで見ることはできないが、その中でもただ一つ分かることがあった。それは、円柱の足場が、均等な感覚で並んでいるということだ。広さは、一人乗るのが精一杯で、他の足場に移動するには、そのたびに大きくジャンプして、飛び移る必要があった。重い鎧を背負って行うには、少々無謀だと言える。


「騎士として恥ずべきことをしようと思う」

 ファムはニヤリと不敵な笑みを浮かべながら言った。

「敵に背中を見せるということか?」

「いや、違うな」

 ファムは思い切り跳躍すると、そのまま再びヤシャの元へと向かって行った。彼も同じく、アスラとともに、彼女に向かって跳んだ。丁度、先程と同じように空中で激突する形となったのだが、ファムは突然、握りしめていた右拳を開いて、握っていた砂を、アスラの眼に投げた。


「真・鎌鼬」

 その瞬間、ファムの剣から真空の刃が出現し、アスラとヤシャの体を切り裂いた。

「ぐ、これが騎士の恥か」

 ヤシャは何とか体勢を立て直すと、再び地面をバネに跳んで、落下してくるファムに斬りかかった。

「某とて剣士だ。アスラだけが闘っているわけではないわ」

「甘いわ」

 ファムは落下しながら、ヤシャの顔面を右足で蹴り上げた。彼の顔に真っ赤な靴跡が付くと、そのまま足場の上に激突した。


「卑怯者・・・・」

「そっちが2対1で来ておいてよく言うな。もし、お前が一人であったら、こんな真似はしなかった」

「なるほど、大した女だ・・・・」

 ヤシャはふらつきながらも、アスラを前方に出した。アスラは6本のカタナをグルグルと回転させながら、ファムの方を向いていた。

「大旋風」

 アスラのカタナの先から、ファムの真・鎌鼬以上に大きな、竜巻とでも言うべき、強大な真空の渦が巻き起こった。そして大砲のように、横向きに真っ直ぐと、ファム目掛けて放たれた。そして彼女の足場ごと、宙に巻き上げてしまった。


「うあああああ」

 足場を失い、宙に放り出されたファムは、必死に手を動かしもがいていた。そして砕けた足場の欠片を乗り付きながら、安全な場所を探した。しかし敵も甘くはない。欠片の裏からアスラが現れると、今度は空中で大旋風を放とうと、カタナを回転させていた。

「させるかあああああ」

 ファムは両手で剣を握ると、そのまま正面に、アスラの顔面に串刺すように、剣を額に突き入れた。

 アスラの額からは血が流れ、両目からも血の涙を流していた。ファムはそのまま剣を抜くと、アスラを足で蹴り、それをバネにして、他の足場に着地した。


 アスラも傷を受けながら、足場に何とか着地することができた。しかし今の戦闘で、地形がかなり変化してしまっていた。同じく額に傷を負っているヤシャが、自分のカタナをアスラに投げた。アスラはそれを一番下の右手でキャッチした。どうやら先程の戦いで、カタナを一本落してしまったらしい。

「恐ろしい騎士だ。しかし今ので、そなたはアスラを本気で怒らせた。奴の顔を見ろ」

 ファムは言われるがままアスラの顔を見た。何とさっきまで笑っていた顔が情けなく泣いている。眉が下がり、唇が紫色になっていた。

「これが何だ」

「今に分かるさ。そなたの失敗がな。アスラの怒りの表情をもうすぐ見せてやる」

 ヤシャの言葉の真意は、ファムに伝わらなかったが、彼女はすぐにそれを体験することとなるのだ。

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