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闇の侵攻

 静かに迫ってくるガロを見て、イフリートの隣にいるシヴァが悪戯っぽく笑った。

「えへへへ、ちょっと生意気だよ。おじさん、人間の分際でさああああ」

 シヴァは地面を蹴って、ガロの元に駆けて行った。ファムは思わず眼を閉じた。マロの父親が死ぬ姿など見たくなかったのだ。もっとも、それはただの取り越し苦労であることに、それから僅か数秒後に気付くのだが。

「目障りだ」

 ガロは一言、そのまま剣を片手で持ち、右から左へと薙ぎ払った。

「なっ・・・・」

 イフリートはその姿に思わず目を奪われた。それは一瞬の出来事で、その斬撃の美しさは武人にしか分からない、見事なものだった。そして首と胴が離れ、ただの血肉の塊となってしまったシヴァへの興味が消えるぐらいに、その一撃は強く、彼の心を掴んだ。結論を先に言うと、最早、イフリートはガロに勝てないということを、瞬時に悟ったのである。


「ああ、すご・・・・」

 驚いていたのはイフリートだけではない。そこにいた誰もが、同じように口をあんぐりと開けたまま、言葉を失っていた。

「次はお前だな」

「ああ」

 イフリートは最早、抵抗をしなかった。これほどまでに強い男に殺されるのであれば、寧ろ本望だとでも言うのだろう。その瞳には後悔の欠片も無かった。

 ガロはそのままイフリートの首を刎ねようとしたが、その瞬間、突然、大きな地震が世界を揺らした。


「何だ?」

 ファムは思わず空を見上げた。何と信じられないことに、鳥達が空から降って来たのである。そして空は紫色に染まり、今が昼なのか夜なのかも分からないほどに、不気味な天気となっていた。

 黒い稲妻が岩を砕き、川の流れは速くなる。辺りの気温が一気に冷え込み、まるで獄寒の世界のようであった。


 今、世界で何かが起こっている。そんなことは子供でも分かるだろう。

「これで分かっただろう」

 ガロは静かに言った。彼の言った通り、闇の侵攻が始まったのだ。既に世界は滅びに向かって痛ましい変貌を遂げようとしていた。


 古代神獣編完結

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