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光と闇

 しばらくの静寂の後、ファムはガロの元へと駆け寄った。

「あなた、何処かで見たような・・・・」

「気のせいだよ。それよりも速く逃げた方が良い」

 ガロは厳しい顔で空を見上げた。彼は何故、古代神獣との戦いに参加しなかったのだろうと、ファムは疑問に思った。すると突然、彼女の背後から猫背の男が現れた。

 男は白髪に白髭を蓄えた、年齢は70過ぎぐらいの風貌をしていた。男はファムの隣を通ると、そこにいる全員が聞こえるように、大声で話し始めた。

「良いですか。私とガロさんはずっと大魔導図書館にいました。それはこの世界の危機を皆様に知らせるためです。皮肉なことに、その世界の危機を防ぐことはもうできません。理由は明白、神獣王が二体とも命を落としてしまったからです」


 老人が話していると、近くで聞いていたイフリートとシヴァが突然、老人の元に近付き、イフリートが彼の襟首を掴んで投げた。

「あ・・・・」

 老人は地面に頭を強く打ちつけて動かなくなった。

「この老いぼれめ、ドラド様は死んではいない」

 イフリートは語気を荒くすると、周りを鋭い目で睨み付けた。

「まだ、戦闘は終わっていない。我ら二人が、最後の古代神獣として、ドラド様の本懐を遂げるのだ」


 今にも襲い掛かってきそうなイフリートを制止した人物がいた。

「待てよ神獣。それどころじゃないんだ。俺の話を聞いてくれ。お前が認めようが、認めまいがどうでも良いが、とにかく神獣王は死んだ。この世界は光と闇に分けられている。俺達の住んでいる世界は、光だ。そしてこの世界にいる神獣は、いわば光の神獣ということになるな。しかし表には必ず裏があって、闇の世界も存在しているのだ」

 ガロは、困惑している人々の視線など、どうでも良さそうに話を続けた。

「この世界の裏には、闇の世界が存在している。そしてそこには闇の人間と、闇の神獣がいる。俺達がいるのと同じようにな。そしてここからが重要なんだが、光と闇は、互いに力が均衡していたからこそ、今まで帳尻が合っていたんだ。しかし、今、光の神獣の王が死んでしまった。ドラグーンもドラドも。光の力が弱まるとどうなるんだ。お嬢さん?」


 ガロは突然、ファムに話を振った。彼女は戸惑っていたが、自身無さそうに答えた。

「闇が強くなる?」

「その通りだ。光が弱まれば、闇が強くなる。逆に闇が弱まれば、今度は光が強くなって行く。最悪なことに、闇が侵攻してくるだろう。俺はその事実を、ここでくたばっている、魔導図書館の館長と発見したんだ。だがもう遅い。館長は古代神獣に殺されてしまうし、闇が何処から来るのかも分からない」

 ガロが頭を抱えて悩んでいると、先程指されたファムが、まるで授業を受けている学生のように、静かに手を上げた。

「どうしたお嬢さん?」

「こんな時に相応しくないかも知れませんが、さっきあなたがガロと呼ばれているのを聞いて気付きました。あなたはマロの父親ですね」


 ファムは詰め寄るように言った。すると隣で立っているアリッサとソルガも表情を硬くした。彼がマロの父親ならば、何としても彼に会わせなければと、責任を感じたのである。

「違うな。俺は生涯独身だ。それに今はそんな話をしている時ではない」

 まともに取り合おうとしないガロに、今度はアリッサが尋ねた。

「マロは、今眠っています。意識が戻らないんです。あなたは父親じゃないんですか?」

「悪いが身に覚えがない」

 ガロは知らないと言い続けたが、その瞳は、三人が良く知っている人物と同じように輝いていた。これが親子と言わずして何と言うのか。ファムは今すぐ、彼をバルド共和国まで連れて行きたいと思った。


 ガロは館長の体を抱えると、死後硬直が始まっていることに気付き、頭を垂れていた。

「そうだ、そこの神獣よ。お前達の存在は少々邪魔だな。館長の件もあるし、ここらで死んでおくか?」

 ガロは背中の剣を抜いた。そしてイフリートとシヴァに近付いて行った。館長の死が相当、心に響いたらしい。その姿からは強い殺意を感じた。

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