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神獣王の最期

 氷の粒がファムに襲い掛かった。彼女はそれを剣で弾き飛ばした。もう30分近くも同じことを繰り返している。こちらの疲労は溜まる一方だというのに、シヴァは全く疲れというものを見せていない。

「こうなったら、捨て身の覚悟で」

 ファムはシヴァの元に走った。彼女は氷の粒を再び発射した。先程までの彼女ならば、そこで立ち止まり、氷の粒を剣で弾くところなのだが、今回は攻撃を無視して、真っ直ぐとシヴァに向かって特攻した。

「ぐあ・・・・」

 氷が彼女の皮膚を削り取っていく。皮が捲れ、血が滲み、それは耐え難い苦痛であったが、それを意に返している余裕はない。

「覚悟しろ」

 ファムは剣を構えて、シヴァに斬りかかった。

「あ・・・・」

 咄嗟に氷の壁を作り防御しようとしたシヴァだったが、接近戦ではファムの方が遥かに素早く立ち回ることができる。そのまま剣で、彼女の額を斬った。


「いだ・・・・」

 シヴァは額を両手で押さえながら背後に跳んだ。ファムはこのチャンスを逃すまいとさらに追撃を加えようとしたが、上空から降り注ぐ赤色の光線に、行く先を阻まれて、思わず足を止めてしまった。

 ファムは空を見上げると、ドラグーンと、それと似た形状をした赤黒い竜がぶつかり合っているのを発見した。今の赤い光線は、赤黒い竜の口から放たれたものだったらしい。

「ぐおおおおお」

 ドラグーンは雄叫びとともに、自らも口から青い光線を放った。そして赤黒い竜の皮膚を僅かに削ると、今度はそのまま竜の体に爪を突き刺して、接近戦に持ち込んだ。


「やるようになったな、ドラグーンよ・・・・」

「ドラド様。悪いが、あなたの時代はもう終わったのだ」

 ドラグーンの爪が深々とドラドの体に喰い込んだ。そして真っ赤な血を、その図体に見合った、滝のような量を流していた。そしてそのまま心臓を抉り取ろうと、ドラグーンが爪に力を入れた。

「ぐああああ」

 ドラドは苦しみもがくと、最後の抵抗とばかりに、自身も、その鋭い爪をドラグーンの皮膚に突き刺した。

「あぐううう」

 二体の竜は、互いの体を爪で傷付け合うと、そのまま地面に向かって急降下した。そして砂嵐のように激しい埃を立てながら、今度は地面の上で組み合っていた。


「神獣王」

 フェンリルは叫びながら、ドラグーンの元へと駆けて行った。今までとは違う、終末というものを感じざるをえない状況に、誰もが、フェンリルと同じ気持ちだった。だが恐れていたその時は、既に始まっていたのだ。

 互いの爪が、互いの心臓に突き刺さり、二体が同時に低く唸ると、それに呼応するかのように、血飛沫が上がった。そしてそれはいつしか霧状になり、辺り一帯に降り注いだのだった。

「フェンリルよ・・・・」

 初めて聞く弱々しい声に、フェンリルは耳を疑った。あの神獣王の生命が終わろうとしているのだ。

「ドラドは仕留めたが、悲しいかな、私の命も限界のようだ」

「神獣王・・・・」

「光と闇の均衡が崩れる。闇の侵攻が始まってしまう。だからお前が皆をまとめるのだ。私は少し生き過ぎたようだ。なあ、ガロよ・・・・」


 ドラグーンは、いつの間にか顔のすぐ近くにまで来ていたガロの眼を見た。既に眼が霞んで、彼の顔を見ることができない。それなのに、彼がどういう顔をしているのか分かった。彼は悲しんでいた。眼を細くし、涙を堪えていた。

「元相棒よ。静かに眠ってくれ」

 ガロの言葉を聞くと、ドラグーンはホッとしたように眼をゆっくりと閉じた。その表情は安らかで、まるで子供のようだった。

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