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炎と炎

「覚悟しろ」

 イフリートが赤いローブを翻すと、何も無いはずの空間から炎の槍がアリッサに向かって放たれた。

「サラマンダー」

 サラマンダーが口から炎のブレスを吐き付けた。炎の槍と炎のブレスがぶつかり合った。そして炎の槍が、サラマンダーの炎を喰う形で、すり抜けると、そのままアリッサの頬を掠めた。

「ああ・・・・」

 思わずその場で尻もちを突くと、イフリートはそれを見越していたかのように、炎の槍を、今度は六本同時に発射した。そしてそれらはまるで、生きているかのようにフラフラと旋回すると、アリッサの両脇を抜け、背後から彼女の両肩と両足、そして腰などに突き刺さり、その場で燃え盛った。

「あぐううう」

 アリッサは全身を焼かれながら、膝を突いて丸くなった。炎を操る自分が、逆に炎によって生命を脅かされるなどお笑いだ。冷静に考えれば可笑しくなってくる話だ。


「アリッサ」

 サラマンダーはアリッサに近付くと、何を思ったのか、自らも炎を吐き、それを彼女に浴びせた。一見、逆効果に思えるこの行動が功を奏した。まるでサラマンダーの炎が彼女を守るように、姦ぞ世を苦しめるもう一つの炎を消したのだ。炎を炎で消すという荒業をやってのけたのである。


「ありがとう、サラマンダー。おかげで奴の攻略法が分かったわ。炎には、より強い炎が効くのね」

「面白い奴だ。良かろう。本気で闘おう」

 イフリートは両手を強く握りしめると、全身に炎の力を溜めた。何をするのか見当もつかないが、直感で、先程よりも遥かに強い一撃を喰らわせてくるのだろうと予想できた。

「燃えよ」

 イフリートの両手から炎の波が放たれた。そしてそれはグルグルと渦を巻いており、威力の高さを感じさせていた。

「終わったな」

 イフリートはクルリとアリッサから背を向けた。彼女の全身を炎の波が焦がし尽くしたのである。

 念のために振り返ってみると、アリッサの姿は消えていた。あまりの炎の強さに、肉片すら残らなかったのだろうと、彼は介錯した。


「少々、やりすぎたか」

 イフリートがシヴァを援護しようと、歩き出したその時だった。突然地面から、先程イフリートの放った炎の槍にと同じ形状をした魔法が、彼の体を貫いた。

「がはあ」

 イフリートは油断していたせいか、その攻撃を全てまともに受けた。そしてそのまま背後に下がった。地面が崩れ、中から土だらけのサラマンダーとアリッサが現れたのである。

「何だと・・・・」

 自分の身に起きた現実が分からず、戸惑うイフリートに対して、アリッサは得意げにチッチと口を鳴らして。

「さっきの教訓が役に立ったわね」

 イフリートは先程アリッサのいた場所を見た。何と、そこには人が一人入れるぐらいの窪みと言うよりも、一つの穴ができていた。彼はその瞬間、全てを悟った。彼女は炎を受ける直前に、地面に自らの炎で穴を開けて、そこに潜り攻撃を避けたのだ。そしてそのまま、炎で地面を削りトンネルを造った。そしてイフリートを追い越すと、再び炎で、今度は出口を掘ったのである。彼女はイフリートの足元で、その地面の底で、モグラのようにトンネルを掘りながら進んでいたのである。


「見事だ。正直言って感服したぞ。だがな、向こうを見ろ」

 イフリートはシヴァとファムのいる方向を指した。二人は、今の二人と同様に闘っているが、ファムの方が明らかに押されていた。シヴァの放つ氷の槍を剣で弾くのが精一杯で、防戦一方になっているのだ。

「相性が悪いのだあの二人は。遠距離を得意とするシヴァと、近距離を得意とする騎士では、ハンデがありすぎる」


 アリッサは悔しそうに唇を噛んだ。さらに上空では二体の竜がぶつかり合っているのである。この闘いが人類の存亡を決めるものであることを、嫌でも感じてしまう。

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