生き延びるための執念
「私はね。ドラド様に頼まれて、グーラちゃんを始末しに来たんだよ」
「くっ・・・・」
グーラは覚悟を決めた。もう自分が逃げられないことを悟ったのだ。本当は悪魔の巣に戻ったら、適当な言い訳を使って、許しを請うつもりだったが、それももう叶わない。だからといって、ファム達と共闘する気にもなれず、しばらく無言のまま項垂れていたが、すぐに彼女らしい考えが思い浮かび、顔を上げた。
「ふん」
グーラは体に力を込めた。すると切断されていたはずの左腕が、木の根が伸びるように再生した。
「大人しく死ぬ気はないみたいだね」
「当たり前よ。でもね、私は別に反逆するつもりはないし、これからは自分のために楽しく生きて行くわ。でもそのためには乗り越えなければならない壁がある」
グーラは爪を尖らせた。そして目の前にいる青い髪の少女をじっと見据えた。
「あんたを殺して、ここから脱出する」
「へえ・・・・」
グーラは地面を蹴った。そしてシヴァの方に駆けて行った。
「うりゃああああ」
グーラは眼を見開くと、強烈な蹴りをシヴァ目掛けて放った。対するシヴァは全身から氷柱を発射した。
「あはははは。楽しいねグーラちゃん」
氷柱がグーラに向かって飛んで行く。彼女はそれを爪で砕きながらシヴァの元へと近付いた。
「この間合いならイケる」
グーラの蹴りがシヴァのこめかみを捕えた。しかしその蹴りは、シヴァに近付けば近付くほど、速さを失い、同時に威力も消えて行った。
足が凍っている。それに気付くのに大した時間は必要なかった。足を大きく上げた状態で凍るというのは中々に滑稽で、また屈辱的だった。そんなグーラをシヴァは笑っていた。
「私の周りは超低温なんだよ。ここじゃ、どんな生物だって生きてはいけないんだよ」
「よ、良かったわ・・・・」
「何が?」
「指先は凍っていない」
グーラはパリパリという音を立てながら、指を僅かに動かして見せた。同時に指の氷が少し砕けた。
「指先で何ができるのかな?」
「これが出せるわ」
グーラは懐に手を入れると、黒いガラス玉のような物を出した。それは黒炎玉だった。先程のジャックとの闘いの後に、こっそりとゴーレムの中に埋め込まれていた、この兵器を回収しておいたのだ。
「グーラちゃん憐れすぎるよ。超低温の世界じゃ、どんな物だって使えないんだよ」
「違うわ。この兵器を起動するには、ホンノ少しの魔力があれば良いのよ。これでこの巣を吹っ飛ばしたらどうなるかしらね。少なくとも、あんたと私は致命傷を負うことになるし、ドラド様とイフリートも少なからず痛手を負うこととなる。何より、私を捕虜にした人間どもを殺せるのも大きいわね」
「やめ・・・・」
シヴァが言いかけたところでもう遅かった。既にグーラは魔力を込めて黒炎玉を持ち上げると、それを地面に投げて叩き割った。同時に玉がオレンジ色に発光し、巣の全体を包み込んだ。




