正面突破
グーラとジャックは悪魔の巣から出ると、ファム達のいるテントを訪れた。彼らの姿を見るなり、ファムは剣を抜いて、それをグーラに向けた。
「お前、何故ここにいる?」
「止めてやってくれファムさん。こいつはオラ達の仲間、正式には人質だど」
ジャックから経緯を聞いたファムとアリッサ、ソルガは彼の考えをしぶしぶ承諾した。いつ裏切るかも知れない者を頼りにするのは危険に見えるが、彼女の存在が、これからの戦いに役立つのも確かである。
「ふん、良いだろう。しかし信用できないな」
ファムはグーラの顔をギロッと、囚人でも見るような眼で見つめた。もっとも、囚人という表現はあながち見当外れでもないのだが。
「私が信用できないのね。なら、これはどうかしら?」
グーラは左腕を前に突き出すと、それを手刀で切断した。彼女の左腕が地面に落ちた。あまりの出血量に、彼女の唇は震え、青紫色になっていた。
「あ、馬鹿・・・・」
ファムは慌てて、白い布でグーラの傷口を押さえた。止めどなく流れる血液によって、それが真っ赤に染まるまで、そう時間は掛からなかった。
「はあ・・・・はあ・・・・。これが私の覚悟よ。私はね、あんた達、忌まわしい人間どもを巣に入れてしまった。その罪によって、ドラド様に処刑されるわ。でもそんなのは嫌。私はイフリートとは違う。あの方への忠誠は、自分の身の安全のためだけよ」
「左腕に免じて信じるわ」
アリッサはグーラを見て言った。
「さあ、行きましょう」
ファム達は悪魔の巣目指して侵攻を開始した。ジャックは自分も行くと駄々をこねたが、全身の傷を重く見たファムによって、テントに残された。
悪魔の巣を眼前にしたファム達は。まずグーラを前に突き出した。
「ねえ、本当に私から行くの?」
「当たり前だ。お前は人質なんだから。それに案内役が必要だ」
グーラは嫌がりながらも、しぶしぶ巣の入り口に足を踏み入れた。
「え、何・・・・?」
巣の中の空気が急激に冷たくなった。その異変に気付いたのはアリッサだけではない。あまりの低温に唇が張り付き、全員、声すら出せなくなっていた。するとグーラの体が何かに引っ張られるように、巣の奥へと吸い込まれて行った。彼女の眼は怯えており、これが彼女によるものではないことが伝わってきた。寧ろ、裏切った彼女に対しての制裁ととることができる。
「がはああああ」
壁に叩きつけられたグーラは、正面から冷気とともにシヴァが現れたのを見た。
「えへへ、今更のこのことどうしたの?」
「何がよ。私が奴らをここまで引き付けてやったのよ。寧ろ褒めて欲しいぐらいだわ」
「へえ、そういうこと言うんだ」
シヴァはニッコリと笑うと、グーラの襟に付いている小さなクローバーを手で取った。そしてそれを手の平に乗せて、彼女の前に突き出した。
「これはね。通信草という便利なアイテムだよ。遠くの会話を拾ったり、2枚の通信草を使って、遠くで会話したりできるんだ。私がドラド様に頼んで、グーラちゃんに着けておいたんだけど。大成功だよ。ほら」
シヴァは通信草に力を込めると、草の葉が赤く発光した。そしてグーラの声と思しき会話が、葉の表面から流れてきた。
「あ・・・・」
グーラは思わず倒れそうになった。ドラドへの忠誠心が無いことが聞かれてしまったのだ。




