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悪魔の巣

「オラは行くど」

 真っ先にドラグーンの背に乗ったのはジャックだった。先駆者と言うのはいつの時代も偉大である。彼に続いて、沈黙を保っていた者達も、行きたいが、それには少し勇気の足りなかった者達も、ドラグーンの背中に次々と乗り込んで行った。

「僕達も行きましょう」

 ソルガの言葉とともに、ファム、アリッサも黒く大きな背中に、自らの体を預けることにした。全員が乗ったことを確認すると、ドラグーンは天井に向かって青い光線のようなブレスを吐いた。天井が崩れ、真ん中にポッカリと大きな穴が開いた。穴の先からは青空が見える。彼はそのまま翼を広げて、青空に向かって飛んだ。


「急ぐぞ」

 ドラグーンの背中の羽が鋭くなった。そして雲を突っ切ると、その速度は数100キロにも及び、フェンリルのそれとは比べものにならないほどに、別世界のスピードを誇っていた。

 世界が小さく見える。今まで旅した場所も、まだ行ったことのない場所も、全部が同じ景色に見えるほど、ドラグーンは高くまで来ていた。

「うおおおお」

 ドラグーンは地面に急降下すると、両足で地面の上を掘るように擦った。足の裏からは煙が立ち、火が上がっていた。彼は悪魔の巣が丁度見下ろせる、崖の上に降りると、背中にちょこんと乗っている小さな乗客達を降ろした。


「本来ならば、ここで私があの巣を破壊してしまうところだが。あの巣の中には食料とされている人間達がいる。彼らを救出できて初めて我々の勝利となるのだ。皆の者よ頼むぞ」

 ファム達は崖上から双眼鏡で悪魔の巣を確認した。

「なるほど、あれはすごいな。枝が邪魔で何も見えない」

「二人とも分かっていると思うけど、ここは様子を見るべきね。他の賢い連中は、既に崖下にテントを張っているわ。戦闘を始めるならば、夜がベストね」

「僕もアリッサさんに同感です」

 三人は崖上にテントを張った。そしてサラマンダーで火を点けると、木の棒にマシュマロを突き刺して焼いて食べ始めた。その一見呑気そうに見える姿に苛立っていた男の気配にすら気付かずに。


「お前さんがた。何やっとるど。敵前でマシュマロなんぞ食って・・・・」

 ジャックは斧を片手に三人の前に立つと、火を靴底で踏みつけて消してしまった。

「何だ君は?」

「オラはジャック。古代神獣どもに村を滅ぼされ、復讐に燃えている男だど」

「そうか、それは気の毒に。しかしだな、戦いというのは冷静さが大切だ。私達は夜襲をかけると決めたのだ。そのために今は休んでいるんだ」

 宥めるように説明するファムに、ジャックは食い下がった。

「そんなこと言って、マシュマロ食いたいだけだど。俺は一人でも行くど」


 ジャックはそのまま背を向けると、一人でワザと音を立てながら歩き始めた。

 その姿に、共鳴した男が二人いた。彼らはファムの知り合いの騎士だった。

「ジャックよ。我々も行くぞ」

 ジャックの肩を背後から叩いた男は、かつてブラスト家の当主の座を巡って死闘を繰り広げたカイザーと、同じく盲目の闘士クルトだった。

「見損なったぞファムよ。敵を前に怖気づいたのか」

 カイザーは相変わらず甲冑に身を固めていた。ファムは立ち上がると、カイザーの目の前で怒鳴った。

「今行くのは危険だ。みすみす死にに行くようなものだ」

「それは君が怯えているのを誤魔化したくて言い訳しているに過ぎん。見ていろ、我々が古代神獣王の首を取ってやる」


 カイザーはクルトとジャックを引き連れて、誰よりも速く悪魔の巣に近付いて行った。

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