表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/121

ガロの罪

 ガロは若い頃にある過ちを犯した。それは世界のタブーであり、背徳という言葉で説明ができた。簡単な話、彼は神獣と恋をしたのだ。その神獣はルカと言って、金色の神を腰まで垂らし、肌は白く、瞳は水晶のように青く澄んでいた。人にはない美しさと、彼女の献身的な姿に、ガロが夢中にならないはずがなかった。そしてルカ自身も、神獣にはない。彼の人間臭さと、大雑把な優しさに、己が命を課してでも、彼と一生を添い遂げたいと思っていた。


 ガロは丁度、バレンタイン、シャーロック、クロウとともにパーティーを組んで、世界中を駆け回っていた。ルカと会えるのは、せいぜい1年に1回あるかないかであった。だが今にして思えば、それが良かったのかも知れない。何故ならば、その後、二人は互いを求め合うあまり交わってしまったのだから。そしてそれが、決して許されない行為であることは、互いに無意識のうちに、生命で知っていたはずだった。


 駆け落ちという言葉が合っているのかも知れない。二人は世界から逃げるようにして、姿を晦ませた。当時、ガロと契約していたドラグーンの怒りは、形容し難いほどに凄まじく。彼の抹殺を決断したのだった。やがて二人の行為は、全世界の注目の的となり、二人は日夜、一刻として安息する時間すら与えてもらえず、逃避の日々を宿命付けられることになったのだ。ルカの妊娠が発覚したのは、それから1年後のことだった。


 ルカは名もなき小さな宿屋で、子供を一人産むと、そのまま力尽きてしまった。彼女の亡骸は花畑の中心に埋められ、ガロによって簡素な墓標が造られた。そして彼は気付いてしまった。ルカの死は偶然でないことに。どうして神獣と人間との恋愛がタブーとされているのか。その理由は一つだ。人の子を孕んだ神獣は、確実に命を落とすこととなる。それこそがタブーの正体だった。


 ガロは自身の命が狙われていることを知っているので、その息子にマロという名前を付けると、そのまま、マロと書かれたネームプレートともに、彼を名も知れぬ小さな山村に置いてそのまま姿を消した。息子を巻き込みたくないという彼の想いの表れだった。


「これで満足かい?」

 ガロは話し終えると、不機嫌そうに足元の小石を蹴った。ドラグーンは静かに頷くと、クワッと瞳を見開いた。

「その罪を胸に刻んで闘え。今回の闘い、下手をすれば私は死ぬ。そしてその時にはお前にも死んでもらう」

「どういうことだ?」

「神獣王と名乗っておきながら、契約者にタブーを犯させてしまった私なりのケジメだ」

 ドラグーンは力強く言うと、今度はガロの隣にいるフェンリルの顔をじっと見つめた。

「フェンリルよ。大権鐘を鳴らして来い」

 ドラグーンの言った大権鐘とは、この神殿の屋根に供えてある、黄金色に光り輝く巨大な鐘のことである。それは全ての神獣の耳に響き渡り、決して人には聞こえないという。この鐘が鳴る時、彼に従う全ての神獣達は、彼の指揮の元に集結する。

「分かりました。神獣王」

 フェンリルは神殿の奥まで走って行くと、窓から壁を登り、黄金色の大権鐘に体当たりをした。


 大権鐘は大きく左右に揺れた。そして人間には決して聞こえない、超音波のような音を世界中の神獣の耳に響かせた。そして神獣達の瞳の色が変わった。何かを決したように立ち上がると、全員が全員とも、ドラグーンの元へと走り始めた。その中にはゴーレム、サラマンダー、ミストなども含まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ